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教育学研究科附属臨床教育実践研究センター公開講座 『社会的精神分析に向けて』を開催(2022.11.20)

2022.12.02

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臨床教育実践研究センターでは、年1回、深刻化する心理社会的問題への取り組みの一環として、現代人のこころの理解に主眼をおいた公開講座を開催しています。

今年度は、サイモンフレイザー大学教育学部教授・当センター客員教授のロジャー・フリー先生を講師にお迎えし、1120日(日)午後1時から4時まで、キャンパスプラザ京都 第1講義室で開催しました。ここ2年はコロナ禍により開催を見送らざるを得ない状況が続いておりましたが、今年度は久しぶりの対面での開催となりました。心理臨床家や教育関係者、学生の方など、近隣から遠方まで多くのお申込みを頂き、当日は全国的な感染拡大によるキャンセルがありつつも、約50名のご参加を賜りました。

「社会的精神分析に向けて」と題された講演では、まず近年の急激な気候変動が現代人のこころにも大きな不安や恐怖をもたらしていること、そして社会や世界全体で起こっている危機が人々に与える影響は臨床実践においても決して無視できないものであることが指摘されました。続いてドイツ系ユダヤ人精神分析家エーリッヒ・フロムの思想や臨床実践について、彼の生きた世界的危機に満ちた時代背景や、同時代の精神分析家の動向を踏まえながら説明されました。講演の後半では、ある臨床事例が取り上げられ、家父長制や性差別をはじめとした社会的・文化的な背景が人々のこころや行動に様々な影響を及ぼしていることや、こうした問題について検討するためには精神分析においても社会の機能やシステムに関する批判的な認識が必要であることなどが共有されました。

講演後の質疑応答では、フロムと禅の思想との関連やフロムの理論に関する質問のほか、人々の生き方に関する確たる規範が緩んできた現代社会は自由になった一方でそれ故の生きづらさも生じてきているのではないかというコメントもあり、非常に活発なディスカッションがなされました。

参加者からのアンケートでも本講座は大変好評を頂きました。来年度以降も、現代社会の複雑なこころの問題を理解するための視点を一般市民に向けて広く提供し共に考えていく場となるよう開催していきたいと考えています。