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国際会議「承認の諸問題とプラグマティズム・アメリカ超越主義― 北欧-日本の交差と高等教育の実践的課題 ―」を開催しました。(2015.12.16-18.)

2016.02.10

2015年12月16日(水)-18日(金)、ヘルシンキ大学宗教学部において、(1)京都大学、(2) 京都大学融合チーム研究プログラムSPIRITS「翻訳としての哲学と他文化理解」(研究代表者・斉藤直子)、(3)日本学術振興会ストックホルム研究連絡センター、(4)ヘルシンキ大学宗教学部COE(フィンランドアカデミー)“Reason and Recognition”(「理性と宗教的承認」)、(5)ヘルシンキ・コレギウム、合計5つの組織の共催で、国際会議“Issues of recognition in pragmatism and American transcendentalism”(「承認の諸問題とプラグマティズム・アメリカ超越主義」)が開催された。本会議は、フィンランドと日本の学術交流を通じて、他文化との共存に向けた 「承認」(recognition)を主題とするものであった。アメリカ哲学(プラグマティズムと超越主義)を中心的視座とし、そこに教育学、宗教学、政治学、美学、文学など多角的・学際的視点を交えながら「承認」のあり方に迫り、人間と言語を捉え直す学際的・国際的・実践的<他>文化理解のための国際的対話交流が行われた。日本とフィンランドを含む北欧の研究者が「中心」となり、そこに、イギリス、アイルランド、ドイツの研究者を呼びこむ形で、従来の欧米中心的発想を超える、新たな相互反照的な対話の場を創出することを目指して開催された。とりわけ、北欧と日本の若手研究者、女性研究者の活躍を支援する場とすることを念頭に置いて企画されたものである。様々な国から、一日目には25人、二日目には23人、三日目には22人の研究者や学生が集まった。日本からは京大教員2人、国内研究者2人、京大学生5人(うち日本学術振興会特別研究員1人)が参加した。京大との大学間協定交流、教育学研究科との国際交流の一翼を担って下さっているUCL教育研究所のPaul Standish教授も参加し、京大学生のご指導をいただいた。

冒頭、ヘルシンキ大COE Risto Saarinen教授とSami Pihlström教授による本会議の趣旨説明があり、同COEプログラムにとって日本との学術交流は初めてであり、フィンランドと日本という地理的・歴史的な周縁地域の哲学者が、承認の問題をめぐりアメリカ哲学を思想的背景として論じることの意義が述べられた。京都大学を代表して森純一推進機構長からは、国際化の時代における哲学の重要性と英語教育について、逃れられないグローバル化のもと“Why do I exist?”という実存的問いや、異なる価値体系の理解の必要性が生じてきており、リベラル・エデュケーションの重要性が増しているということ、京都大学でもそうした流れの中で英語での授業をよりたくさん提供するようになっていること、その際「まず日本語で考えて、それを伝えるための道具として英語を使う」という考えには反対したいということ、これに関わり昨年のStandish教授の “Lost in Translation”についての講演に多大な影響を受けたということなどについてお話があった。JSPSストックホルム研究連絡センター川窪百合子副所長からは、北欧におけるJSPSの活動についてのご紹介発表をいただいた。一日目、二日目の会議では、フィンランド、イギリス、ドイツ、アイルランドの研究者の発表がなされた。三日目の会議では、ヘルシンキ大COEと京大SPIRITSプロジェクトの対話パネルにおいて、フィンランドの若手研究者と、京都大学大学院教育学研究科臨床教育学講座、修士・博士課程学生および外国人教員Jeremy Rappleye准教授との対話的発表パネルが行われた。京大学生は、研究の最先端を担う研究者に混じり英語での発表を行い、各国の参加者から高い評価を得た。

本イベントの成果としては下記が挙げられる。(1)京都大学および京都大学国際融合プロジェクトSPIRITSが主体となり、JSPSストックホルム研究連絡センターのご支援をいただくことにより、京都大学と北欧の高等教育機関の国際交流に寄与した。同時に京大と教育学研究科のプレゼンスをJSPSやヨーロッパ諸国の先端研究機関に示すことになった。(2)学際的・国際的対話の場において「承認」という問題が多様な視点からグローバル化の世界状況の切迫した問題として論じられ、研究分野や言語、文化の異なる参加者が互いの立場を揺さぶられつつ境界を超えた学術的議論の場が生み出された。(3)京大の大学院生の一部は、会議に先立ちUCL教育所で開催された国際教育研究フロンティアCの授業でStandish教授のご指導のもと英語のディスカッションのトレーニングおよび関連文献の講読を行って本会議に参加し、また渡航に先立っては大学院ゼミで京大教員の指導のもと英語発表のトレーニングと事前準備を行っており、京大の授業と国際会議が発展的につながるものとなった。(4)京大とIoEの連携をハブに、フィンランド、アイルランド、ドイツなどヨーロッパ各国の先端研究機関の研究者との国際交流のネットワークが広がるという波及効果が生み出された。(5)以上の成果は今後国際学術誌論文投稿数の増加や留学生数の増加に寄与する可能性をもつものであり、本イベントの内容の質保証を裏付けるものである。また将来的に京大教員と外国の先端学術研究機関の教員による共同指導の取り組みへの道筋を拓くものでもある。(文責・イベント責任者:斉藤直子)

集合写真

集合写真

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発表する本研究科学生,UCL教育研究所 Paul Standish 教授1

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発表する本研究科学生,UCL教育研究所 Paul Standish 教授

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発表する本研究科学生,UCL教育研究所 Paul Standish 教授3

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発表する本研究科学生,UCL教育研究所 Paul Standish 教授4

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質疑応答風景1

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質疑応答風景2

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ご発表されるJSPSストックホルム研究連絡センターの川窪副所長

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ご発表される本学国際交流推進機構長の森教授