京都大学大学院教育学研究科は、今日、重要な社会問題となっている教育状況に鑑み、21世紀における社会に貢献し得る人材の育成及び理論的、実践的研究の高度化を図るため、平成10年4月から、大学院を中心とする教育学研究科として新たな発展をめざすことになった。

 この研究科の基礎である京都大学教育学部は、昭和24年に新制京都大学の発足と同時に新しく設置されたが、その母体となったのは、明治39年(1906年)6月に京都帝国大学文科大学に設置された教育学教授法講座、昭和24年7月に設置された教育学教授法第二講座、昭和25年5月に設置された教育心理学講座の3講座である。昭和26年4月には、文学部より教育学教授法第二講座(昭和27年に教育哲学講座、昭和39年に教育人間学講座と名称変更)と教育心理学講座が移管され、新たに設置された教育史講座と教育方法学講座(昭和27年2月に教育指導学講座と名称変更)により、草創期の教育学部は出発した。

 その後、教育学教授法講座(昭和39年に教育学講座と名称変更)が、旧制文学部学生の卒業を待って、昭和28年8月に文学部から移管されるとともに、逐次新しい講座が増設され、研究教育体制が次第に整備されていった。すなわち、教育社会学講座と教育行政学講座(昭和27年4月設置)、図書館学講座(昭和28年5月設置)、教育社会学第二講座(昭和28年8月設置、昭和39年2月に社会教育学講座と名称変更)、教育課程講座(昭和29年4月設置)、教育心理学第二講座(昭和33年4月設置、昭和39年2月に臨床心理学講座と名称変更)が相次いで設置された。

 さらに比較教育学講座(昭和40年4月設置)、視聴覚教育講座(昭和46年4月設置)、児童・青年心理学講座(昭和58年設置、その後、昭和63年の独立専攻「臨床教育学」の設置に伴って発展的に解消し、臨床人格心理学講座と名称変更)、生涯学習計画講座(平成4年4月設置)の設置をみた。昭和51年には、学部の課程をこれまでの1学科編成から教育学科・教育心理学科・教育社会学科の3学科編成に改めた。さらに平成10年には大学院重点化に伴い、現代教育基礎学系・教育心理学系・相関教育システム論系の3大学科目(系)からなる教育科学科に再編成し、新たな展開を図ることになった。

 昭和55年、急激な社会の変化に伴う青少年の発達上の問題にかかわる教育相談と治療的な援助を行うために、臨床心理学の研究教育を基礎にして、広く社会に開かれたわが国最初の心理教育相談室が正式に開設された。ここでの教育研究及び実践的活動の蓄積をもとに、平成9年4月には、それを発展させた附属臨床教育実践研究センターが設置された。さらに平成12年4月からは臨床実践指導研究分野が増設され、4分野と相談室の構成となりいっそう充実した。

 また、昭和58年からは、いったん他の学問分野で専門教育を受けた者、あるいは大学卒業後社会人経験を積んだ者で再度本学部に入学して教育諸科学の勉学を望む者が増加しているのを受けて、一般社会人を含めた国内外の大学卒業者を対象に学士入学試験を実施している。

大学院教育学研究科は、昭和28年4月から、教育学及び教育方法学の2専攻をもって発足した。その後、学問の進展と、とりわけ心理教育相談分野からの大学院教育に対する社会的な要請と気運の増大に鑑みて、昭和63年度から教育学と臨床心理学の研究教育及び実践的研究の緊密な連携を図る新しい分野として、わが国で最初の臨床教育学専攻が独立専攻として設置され、臨床教育に関する専門的知見を有する在職社会人に対しても、さらに高度の専門的能力を養うために修士課程入学の途を開いた(第2種)。平成10年4月からは、これまでの教育研究のさらなる高度化を図るために、大学院を中心とする整備と重点化を行い、大学院教育学研究科として出発することになった。この新しく発足した大学院教育学研究科は、教育科学・臨床教育学の2専攻に改め、附属臨床教育実践研究センターと高等教育教授システム開発センター(現高等教育研究開発推進センター)の協力を得て、基幹講座8,協力講座2に再編成され、さらに平成16年4月に臨床教育学専攻に臨床実践指導学講座が設置され、基幹講座9、協力講座2となった。また、平成11年4月から、高度な専門職業人の養成に向けて、教育科学専攻に専修コース(修士課程)が、平成16年4月から臨床実践指導者という新しいタイプの専門家の養成をめざすべく、臨床教育学専攻に臨床実践指導者養成コース(博士後期課程)が設置された。

 以上のように、京都大学教育学部及び同大学院教育学研究科においては、実践と研究の密接な連携のもとに、わが国における先端的な研究及び教育をつうじて有用な人材を育成し、学界並びに社会に貢献する高度な研究教育機関としての役割を果たすことに努めてきたし、今後も努めていきたい。