複雑さを増す現代社会において、さまざまな問題や悩みをもつ人が増えてきて、人々が心理療法を求めることも多くなっている。本講座では心理的な見立てや心理療法を実施するための教育・訓練が様々な実習も含めて、基礎から行われている。それと同時に、多様な心理的問題の背景を考え、心理療法の技法を発展させるための実証的・理論的な研究を行っている。

また、附属臨床教育実践研究センター(連携教育学講座)と協力して教育研究活動を行っている。

さらに、本講座には、日本で初めて設置された臨床実践指導者養成コース(博士後期課程)がある。ここでは、臨床実践に関する実践指導法や事例検討の在り方、スーパーヴィジョンに関する実践と教育に取り組んでいる。そこから臨床実践体験に根ざした実証的・理論的な研究を行っている。

 

桑原 知子(くわばら ともこ)教授

心理臨床学:心理療法と「もう一人の私」

博士論文のテーマは「人格の二面性について」。その後も「もう一人の私」をテーマとして研究を続けている(『もう一人の私』創元社)。また、学校現場におけるカウンセリング(『教室で生かすカウンセリング・アプローチ』日本評論社)や、家庭裁判所調査官との共同研究(『家裁調査官レポート』日本評論社)など、心理療法を広い視野からとらえ、かつ、その本質を深く追求することを目的として、研究、実践を行っている。

髙橋 靖恵(たかはし やすえ)教授

臨床実践指導学:心理臨床学・心理アセスメント・スーパーヴィジョン学・家族心理学

大学院博士後期課程・臨床実践指導者養成コースを担当し、スーパーヴァイザー養成の在り方を検討するスーパーヴィジョン学の構築を志している。
心理臨床学的立場から、青年期・成人期を中心として、クライエント及びその家族に対する心理療法に関する実践的研究を行ってきている。特に無意識の在りようや治療関係という視点から、面接過程や投映法を中心とした心理アセスメントを通して、上記の理解を深めようとしている。

河合 俊雄(かわい としお)こころの未来研究センター教授

心理臨床学:心理療法の哲学的・理論的検討及びユング心理学の深化

心理療法で前提となり、自明となっている概念や理論の批判的検討を行い、それを通じて心理療法を深める(『概念の心理療法』日本評論社)。また心理療法自体を、歴史的、思想史コンテクストの中での位置づける。夢分析を主なテーマとしつつ、イメージを実体化せず、弁証法的で動きを持ったものとして捉えていきたい(『心理臨床の理論』岩波書店)。

田中 康裕(たなか やすひろ)准教授

心理臨床学:ユング心理学に基づく心理療法における治癒とその限界

神経症の心理療法が主たるテーマ。神経症を単に修復すべき「対象」としてではなく、心理学それ自体を創り出すひとつの「主体」として捉える。また、それと並行するかたちで、個人心理療法の実践を通して、夢や箱庭、描画等のイメージを用いた心理療法の治癒要因、さらには、そこに必然的に包含される限界についても検討を深めてゆきたい。

立木 康介(ついき こうすけ)人文科学研究所准教授

心理臨床学:ラカン派精神分析

精神分析にとって本質的な問いは、ラカンによれば、たったひとつに要約できる――意味と現実的なものはいかにつながりうるのか、と。現実界は象徴界の不可能であるというラカンの定義からすればひとつの逆説にも見えるこの「つながり」は、臨床においていかなる形で出会われるのだろうか。症状、幻想、欲動の水準で考えたい。

鈴木 優佳(すずき ゆうか)特定助教

心理臨床学:心理臨床実践の専門性、心哩療法における関係性

心理療法で何が起こっているのか、心理臨床家の専門性とは何かについて、クライ工ン卜と心理臨床家の関係性や、心理臨床家の内的体験過程、メタ分析的に捉えられる心理療法のエッセンスなど、様々な視点から研究を行っている。また、心の構造が変容しつつある、現代社会における心理臨床実践の意味や専門性についても関心があり、実践・研究を両立させるなかで探求している。