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Last-Modified: 08-Mar-16 23:40:06. JST

注意の制御スタイルに文化が及ぼす影響
―実験心理学的アプローチを用いて―


研究代表者:上田祥行
研究メンバー:小宮あすか・横尾知子・坂野逸紀

研究概要
 注意の制御には2つのレベルが考えられる。視環境に対する視覚的注意など知覚における低次レベルの注意制御と思考・推論における高次レベルの注意制御である。これまでの比較文化研究において、文化によって優勢な注意の制御スタイルが2つに大別されることが示された(Markus & Kitayama, 1991)。第一は注意が集団全体に分散する包括的な注意の制御スタイルで、東アジア文化で優勢とされる。第二は注意を個物に焦点化し背景情報を排除する分析的な注意の制御スタイルで、西洋文化で優勢とされる。このような注意の制御スタイルにおける比較文化研究は、主に思考・推論が関わる高次レベルで行われてきた(Masuda & Nisbett, 2001; Chua, Boland, & Nisbett, 2005)。しかしながら、高次の思考・推論が伴わない基礎的な知覚・認知課題における注意の制御スタイルに、文化が及ぼす影響に関して直接アプローチしている研究は現在のところ極めて少ない。
そこで本研究の目的は、以下の3つの課題を用いて文化間比較を行い、注意の制御スタイルに文化が与える影響を明らかにすることである。

課題1 視覚探索課題(Visual Search Task)
 視覚探索課題は予め教示された目標刺激の有無を探索する課題であり、高次の思考・推論を伴わないと考えられている。目標刺激と妨害刺激を入れ替えたときの探索効率の変化(Search Asymmetry)が、日本とアメリカで異なることが報告されている(上田・齋木, 2004)。本コロキアムでは、nativeとimmigrantを比較するなどし、これらの結果を検討する。
課題2 瞬時的物体認識課題(Ultra Rapid Categorization)
 瞬時的物体認識課題では、物体の検出と同時にカテゴライズできることが知られている(Grill-Spector & Kanwisher, 2005)。しかし、日本で行われた実験では物体の検出がカテゴライズよりも早くできる(坂野・齋木, 2007)。注意の観点から、これらの課題を検討する。
課題3 視覚的注意課題(Visual Attention Task)
 日本人の中でもアメリカ人と同様の成績を示す協力者やアメリカ人の中でも日本人と同様の成績を示す協力者がいる。このような協力者の課題間の一貫性を探るために複数の課題を同一の協力者で行い、その成績の相関関係などを探る。本研究で用いた課題は、視覚記憶課題(Luck & Vogel, 1997)、視覚探索課題(上田・齋木, 2004)、空間注意課題(Parasuraman et al., 2005)、線と枠課題(Kitayama et al., 2003)、多物体追跡課題(Sears & Pylyshyn, 2000)である。
 本研究の結果は、知覚・認知心理学に対しては、基礎的な課題における文化の影響に関する知見を与え、ヒトの情報処理機構を明らかにすることに貢献する。一方、文化心理学に対しては、高次の思考・推論における情報処理様式と低次の知覚・認知における情報処理様式のそれぞれにおける文化の寄与を明らかにするであろう。また、本研究で得られる注意の制御スタイルに関する知見は、ヒトの認知研究に重要な貢献となるだけでなく、国際化する社会において文化の相互理解やユニバーサルなユーザーインターフェイスの適切な設計に大きく貢献するだろう。

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