落ちこぼれをつくらないための教育制度研究:アメリカを事例として

研究代表者:齋藤桂
研究メンバー:桐村豪文・三宅浩子
研究概要
本研究は、児童生徒が落ちこぼれることを防ぐための教育制度を、主に法制、政策などの観点から考察することを目的としている。アメリカにおいては、2002年初等中等教育法が改正されたが(PL107-110、以下NCLB法)、同法は“No Child Left Behind(落ちこぼれをつくらない)”ことを掲げている。同国の教育制度を対象とし、如何なるシステムが構築されているか、マクロ的に検討することを中心課題とする。また各メンバーは親の教育参加、連邦補助金の使途に関する裁量拡大、教員政策といったミクロ的課題に焦点化した研究を行う。
コロキアムの共同作業として行った活動は以下の通りである。はじめにNCLB法の法文とその概要を検討した。この中で、各メンバーの行うミクロ的課題が同法の法制度のどの部分に位置付くかを確認した。次に50州およびDCの教育に関する現状を、マクロ的データを用いて把握した。これは教育が州の専管事項であることから、政策環境や政策アウトプットを一律に把握することはできないという判断からである。
またミクロ的課題については、各メンバーが以下の政策・制度を検討した。はじめに、特に学業達成において不利な状況にあるEL(English Learners)の子どもへの教育効果の向上の観点から、親の教育参加を促進するための規定を検討した。同条項がNCLB法の立法過程で追加され、以前の初等中等教育法の同様の規定に比して拡大したことを検討した。次に連邦補助金の使途について、州や学区の裁量が拡大したことを検証した。厳格なアカウンタビリティ・システムで知られる同法であるが、それが裁量の拡大と表裏をなすものであるとも考えられることを確認した。最後に教員政策に関しては、連邦法の変遷を概観することにより、NCLB法の政策課題が以前の法制度との連続性を持つものであることを検証した。
本コロキアムの成果は、「落ちこぼれをつくらない」ことを掲げたNCLB法に基づく同国の教育制度は、とかくAYP(Adequate Yearly Progress)に基づくアカウンタビリティ・システムに焦点化されがちであるが、実際には親の教育参加等に関する規定の増加や、連邦補助金の使途における裁量の拡大、旧来の法制度との連続性を持つ教員政策によって包括的に計画されていることを明示したことにある。
(写真:連邦教育省、2008年1月24日撮影)
