研究の進め方について                   楠見       2006.4

 

0 セミナーについて

0.1 セミナーは文献検討、アイディア交換とデータ解析の3つに分ける.

  毎週水曜日 10:30-12:10-14:10  場所:中央装置室

  Journal Club(最新文献講読会、12:10-13:10) 最新の海外雑誌論文の紹介:

   Psycho ReviewJEPM&Cなど最新号の重要論文を紹介する

  Lab Seminar(アイディア検討会、13:10-14:10) 各自の研究のプランやサーベイ,

   結果などの報告,討論

  心理データ解析演習(水2・前期、10:30-12:00) サテライト     

   データ解析やモデル構築のための紹介とソフトを使った実習を組み合わせて行う.

新しい手法を学び共有する機会なので是非参加してほしい.

0.2 発表のタイトルや紹介論文は,事前(遅くとも月曜までに)BBS-MLに流す.

論文紹介のレジメはwebに掲載するので楠見宛に送る.

0.3 セミナーなどの連絡は,MLを通じておこなう。

0.4 セミナーの運営は,皆の意見を聞きながら進めたいので,意見は遠慮なく出してほしい。

0.5  セミナーでは,研究する立場にたった建設的な批判をして,相互の研究を高める

0.6 セミナー以外にも,個別面談は毎週30分単位でとるので,時間を予約してほしい。

研究は教員、院生がインタラクションしながら進めていきたい。

 

I 修士(卒業)の計画立案について(便覧p160-162参照)

1.修士(卒業)(卒業)論文の意義と内容

1.1 修論(卒論)は研究者としての成果(潜在能力)を示す論文である。2(4)年間の学習・研究成果の反映であり,作成過程における自主的な学習,研究活動(学会発表,論文投稿)が重要である.

1.2 修論(卒論)は,専門雑誌に掲載されるレベルの論文として,テーマ,方法,分析,考察が必要である(そうでないと博士課程(大学院)進学は不可能である).したがって,思い付きだけの調査・実験では論文にはならない.テーマについての,研究史や理論の批判的な文献的研究を十分におこなう必要がある.そうした基礎がないとよい調査や実験はできないし,合理的な議論や結論,さらに,オリジナルな発見を導くことはできない.

 

Ⅱ 博士論文の計画立案について(便覧p160-162,博士論文作成要領参照)

 論文提出のためには,(外部評価として)論文の根幹となる審査付の学会誌論文が2編以上必要である。なお,海外での学会発表,英語論文は高く評価される.毎年1回ぜひチャレンジしてほしい(日頃から英語力を鍛えておく).また,

  投稿から採択,掲載までは,通常1年を要する。したがって,計画的に実験学会発表,論文執筆をしておかなくてはならない。

   おおむね,次のことを計画しておく

  D1前期  修士論文の投稿,修士論文を展開するデータを収集。

  D1夏   展望論文の執筆:関連研究を50編以上に基づいて,自分なりの視点 から,議論をする→博士論文の1,2章とする→投稿する

  D2    原著論文の執筆:博士入学後におこなった実験論文を投稿する. 

  D3    論文の章立てを考え,足りないデータがあれば夏休み前にとる. 夏休みからは論文の執筆に着手する    

 

Ⅲ.計画立案のための読書の仕方

佐伯(1986)によれば,研究は,縦糸(依拠する研究)と斜め糸(対抗する研究)の中に位置づけることができる.そして,研究の横糸は,異なる分野における,同じような考え方や理論,主張である.一見異なるテーマの論文間にどのような結び付きがあるのかを,自分自身で見つけることが,自分自身の研究の始まりである.

 さて,研究テーマを,見つけるにはどうしたら良いだろうか.佐伯(1986)は4つ挙げている.

 1.社会現象において,従来の理論では説明がつかない現象に目を向ける.

 2.学問の研究途上でできあがった前提や制約条件を明確に意識する.

   (縦糸を意識する.過去の研究を勉強することが大切)

 3.どんな研究結果も,実験者,調査者が設定している解釈の枠組みを変えて,全く違う解釈ができないかを考えてみる習慣をつける.

   (斜め糸を意識する.批判的にみる)

 4.当面の研究結果と,どこかで共通している問題が,異なる分野になかったかと考えてみる(横糸に着目する)

 

Ⅳ テーマ設定のポイント

  1.研究テーマ:III参照                                                              

  2.研究目的:何をどこまで明らかにしようとするのか,焦点を絞る.                                          

  3.研究計画・方法:                         

     研究目的を達成するための研究計画,方法(調査,実験,文献研究など)について                          

  4.研究の特色:従来の研究に比べて,どこが新しいか               

  5.この研究に関する日本国内,海外の研究状況:何がどこまで明らかになっているのか    

    そのテーマの国内外第一人者を調べる。webのチェック,e-mail、学会でコンタクトをとる。博士在学中の訪問や2週間-2ヶ月程度の研究滞在,ポスドクでの留学も目指す       

  6.人より優れた研究をする秘密兵器は?

 

  安藤寿康・安藤典明 2005 事例に学ぶ心理学者のための研究倫理 ナカニシヤ出版

心理学関連団体の倫理規定(大棚さん作成)

南風原朝和・市川伸一・下山晴彦() 2001 心理学研究法入門:調査・実験から実践まで 東京大学出版会  レジメ

佐伯 胖 1986 認知科学の方法 (認知科学選書10) 東京大学出版会

   坪田一男 1997 理系のための研究生活ガイド:テーマの選び方から留学の手続きまで 講談社ブルーバックス

吉原真里 2004 アメリカの大学院で成功する方法 中公新書

 

V.年間研究計画(修士・卒業論文)進行予定表(月はおよその目安である)

  (修論を書かない学年も実験・調査を年内におこない, 論文を1本仕上げる)

第1期

4-5月中旬  テーマ探索と絞り込み 展望論文               奨学金,学振申請           

        テーマ設定     専門書(和書→洋書)

        先行研究の探索   和雑誌→洋雑誌、 PsycINFO

        研究計画の立案

第2期

5月中旬-7月 第一実験・調査の準備と実施                 院コロ発表

 

8月       分析,結果の考察

 

9-10月    第二実験・調査の準備と実施                 学会発表

          分析,結果の総合的考察

第3期

11-12月   執筆                            院コロ発表

         第一稿完成

1月       最終稿の完成と提出,審査 

2月       学術雑誌への投稿                                         

(別紙研究実施計画書に,上記の項目を記入する. 1部提出し,コピーを机の前に貼っておく)