It’ not just average faces that are attractive: Computer-manipulated averageness makes birds, fish, and automobiles attractive

平均的な顔だけが魅力的ってわけじゃない!:コンピュータで平均的に処理された鳥や、魚や自動車でも魅力を感じちゃう!?

JAMIN HALBESTADRT and GILLAN RHODES Halberstadt J.; Rhodes G.

Psychonomic Bulletin & Review, 10(1), 149-156, 2003

 

              平均的な容貌は魅力的である。この選択がクオリティの高い配偶者を見分けるといった適応論に対応したものかどうか(the direct selection account)、あるいは、それが[ヒトの]より一般的な情報処理の仕組みなのかをどうかを区別するために調査研究を行った。[それを明らかにするために]三つの実験を行い、その中で容貌の魅力の研究では一般的なデジタルイメージ技術の処理を施した平均的な「鳥」と「魚」と「車」の魅力を調べた。[その結果]処理された平均性も[被験者に]評定された平均性の両方とも三つのすべての刺激のカテゴリーの内で魅力と強い相関があった。更に、「車」以外の「鳥」と「魚」とって、主観的な親近性の効果が統計的にコントロールされたとき、主観的平均性と魅力の強い相関関係のままであった。この結果は、少なくとも二つの仕組みが平均性の魅力の範例に寄与していることを示している。一つは親近性の刺激を選択すると言った一般的な[仕組み]であり、それは三つすべてのカテゴリーの平均性の魅力に寄与している。また、もう他方では、平均性それ自体を選択するといった[仕組み]であり、それは「車」以外の「鳥」、「魚」には観られ、同種を含んだ生命の有機体の中で、遺伝的な質のシグナルを示す特色の選択に影響するかもしれない。

 

Keyword 1

 

direct selection hypothesis

⇒平均的な顔は、配偶者の同種であるという情報を提供してくれるので、進化の過程で平均性それ自体を直接的に選択されてきたという説

undirect selection hypothesis

→平均的であるということが、以前見たことがあるという「なじみ(famiryality)」となりそれが魅力に寄与している説

 

・自然淘汰説(natural selection hypothesis

 

自然淘汰説とは、生物が住む環境には生物を養う資源(食物、営巣地など)が有限にしかないので、その環境で子孫を残すのに有利な性質を持った種族とそうでない種族とでは、必然的に有利なものが残って繁栄することになる。有利な性質を持っていることを適応していると表現し、適応していることが繁栄につながることを適者生存と表現する。この作用が自然淘汰である。

 

・自然淘汰説の条件

 

自然選択説の要約は以下の生物がもつ性質が次の3つの条件を満たすとき、生物集団の伝達的性質が累積的に変化する。

 

@親から子に伝えられる(遺伝)

A個体間に違いがある(変異)

B性質の違いに応じて次世代に子を残す能力あるいは効率に差が生じる(選択)

→上記のメカニズムにより、生存と繁殖に有利な性質をもつ個体が増えていくことで生物進化が起こるとした。

 

    性淘汰

 

自然淘汰(natural selection)が同種個体間の生存力や繁殖力の差にもとづく淘汰であるのに対して、性淘汰(sex selection)は同性個体間の交尾をめぐる競争にもとづく淘汰である。これは同性内選択、たとえばオス間の闘争による場合もあれば、異性間選択、たとえばメスによる配偶者の選り好み(配偶者選択 mate choice)による場合もある。自然淘汰と性淘汰の働き方は、場合によっては拮抗することもある。

 

⇒生存競争の勝ち抜くためにはより同種を繁栄していくことが必要である。そのために、より質の高い配偶者を選択する必要がある。

 

.表情研究における「魅力」

→心理学において、「人間の見た目のよさ」を、もっぱら身体的魅力(physical 魅力)としてきた。(蛭川2000

 

・身体的魅力(physical 魅力)について

身体的とは?

−生体から精神的なもの(パーソナリティ/態度など)を差し引いた、残りのもの。

→つまり、身体的魅力とは「視覚的に捉えられる身体の魅力」

⇒身体的魅力はたいてい、顔写真が使用され、この場合の身体的魅力は顔写真の魅力である。

 

    表情研究における「魅力」は視覚以外にも、聴覚、嗅覚、あるいはその他の感覚によって得られる情報が身体的魅力の重要な要素と重なっている可能性はあるが、この点は問題とされていない。(蛭川2000

 

 

 

    魅力について

 

魅力とは、評定者の主観によって「魅力的」であるかどうかということを決定する言葉であるため客観的な基準について語るのは無意味となる。

 

→「魅力」の客観性を示すBercheid & Walster (1974)の実験によると

英米人に対して魅力評定の信頼性の実験をしたところ、どの実験でも、評定者の性や社会的階層に関係なく、容貌の魅力の評定は意外なほど高く一致することが示されている。評定者間の測定値の相関として、0.7から、ほとんど1に近い値が報告されている。

*ところが、魅力を構成する複数の下位要素の研究はあまりすすんでおらず、表情研究の魅力は単一的な意味で扱ってきた。

 

・魅力研究と進化理論

 

    社会生物学の考え方−そもそも、人間が容姿にこだわるのはなぜであろうか?−

多くの動物が、身体を派手な飾りや模様をもっているが、それらにはどうやら異性に自分をアピールするという機能があるらしい。

→そういった、飾りや模様は、異性がそれを選択することによって進化してきたと考えられている。

⇒このような社会生物学的な進化理論は容姿の魅力にも応用できるかもしれない。しかし、どんな行動にもその理論が適用できるわけではない。

 

・ある認知や行動のパターンを社会生物学的な進化理論で扱う条件

 

@それに遺伝的な基盤が存在すること

ex.魅力の認知が生得的かどうかをたしかめる実験 Langlois, Ritter, Roggman,& Vaughn, (

1991)

 

仮説)文化的ステレオタイプの影響をまだあまり受けていない子どもでも、成人と同様の規準を持っているとすれば、それを遺伝的な基盤を持つという間接的な証拠となる。

⇒アメリカの36ヶ月児を対象として、あらかじめ成人が魅力的と判定した写真の方が、そうでない写真よりも、注視時間が長いことが報告されている。

 

Aその遺伝的基盤が淘汰を受けて進化してきたこと

・ヒトの進化の過程で、容貌、あるいはその魅力の認知機構には淘汰が働いたのであろうか。−魅力的とされる外見を持った者が性的なパートナーとして選択される傾向を調べる実験

ex.Buss(1989)に質問紙の実験では、世界各国の37の社会で配偶者の選択基準について質問紙調査を行った。その結果、どの社会でも、相手の「ルックス」が重要視されていることが明らかになった。配偶者の選択において相手の外見を重視するという傾向は、ヒトという種にあってかなり普遍的であるこということをこの結果は示している。

 

1) 本実験の問題提起

1-1) 魅力的な顔とはどんな顔なのか?

 

合成写真による「魅力的な顔とは単に平均的であるにすぎない」という実験

langlois & Roggman (1990)は、ランダムに抽出されたアメリカ人の大学生男女の顔写真を、大きさを揃えて画像データに変換し、ドット毎の濃淡値を平均化することで、平均顔画像no

合成に成功した。そして、合成する顔写真の枚数を2481632と増していくにつれ(より平均化していくにつれ)、合成顔がより魅力的と認知されることを発見した。

 

→近年の研究では、平均化された表情が文化を越えても、文化内でも魅力と関連があることを示している。(Jones & Hill, 1993; Light, Hollander, & Kayra-Stuart, 1981; Rhodes Sumich,& Byatt, 1999; Rhodes & Tremewan, 1996; Rhodes, Yoshikawa,et al 2001; but see grammer & Thorinhill, 1994)

 

1-2) どうして「平均的な顔」が魅力的なのか?

 

−進化心理学者からの見地(the direct selection hypothesis

Symons(1979)によると、形態の平均性は、その個体が保持している有害な突然変異の少なさを表すので、それに性的魅力を感じるような認知システムが進化してきた。また、Langolois & Roggman(1990)によると、もし、進化過程を振り返って、同種から逸脱するような容貌が影響するといった先天的の条件が繁殖を減少させてしまうことに関連しているとするならば、ヒトの選択が配偶者のそのような容貌を選択することは、生殖を成功させないだろう。逆にもし、容貌の選択が遺伝的なものであるなら、平均性の選択は繰り返し進化してきたと考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1-3) 容貌の平均性の魅力がthe direct selection hypothesisであるかどうかを確かめる実験−Helberstadt and Rhodes (2000)

 

・仮説

 

−もし平均的な顔の魅力が、実際に健康な配偶者を見つけるという問題の答えとなるような進化の結果であるならば、他の例の平均性では同じことが言えないだろう。つまり、進化とは無関係なカテゴリーではそのような「魅力」が見て取れないということが予想される。

 

結果と考察

−平均性と魅力を評価するためにイヌ、トリ、腕時計の画像を用いて調査したところ、それぞれのカテゴリーで平均性と魅力の強い相関が認められた。しかし、これは平均的なイヌ、トリ、腕時計は生殖的な利益を示すものでないから、これらの平均性の選択は、配偶者を選ぶと行ったはっきりとした適応論上の問題というよりむしろ、ヒト全般における情報処理の形状に依拠しているのかもしれない。

 

(-_-):先行研究では、イヌの「平均性」と「なじみ」は、決して強い相関でなく、正の相関として述べられていた。(r[50]=.63,p<.001

 

2) Experiment 1

 

2-0) 顔の平均を操作するテクニック−平均顔の類似性を変化させる

RhodesTremewan1996

    コンピュータ処理されたカリカチュア生成プログラムを使用

    顔の線画を歪ませて平均に近づけたり(アンチカリカチュア)平均から遠ざけたりした(カリカチュア)

    プログラム−それぞれの顔のランドマークポイントを合成画(平均顔)の対応ポイントと比べる

→・2つの間の相違を強調する(カリカチュア)

・相違を低減させる(アンチカリカチュア)

(詳細はRhodes,Brennan,Carey,1987

⇒結果:魅力の評定→アンチカリカチュア画像>歪めていない顔>カリカチュア画像

 

HalberstadtRhodes2000

なじみは平均的な鳥が魅力的であることに寄与するが完全に説明しはしない

→ここでその結果を再現することを期待

 

 

 

2-1) 方法と手続き

 

    実験参加者

 

オタゴ大学構内の学生職業情報センターから集められた155人の男女

1時間の実験 報酬10ドル

 

(-_-):男女の比率を明記するべきではないか。

 

・刺激

ニュージーランドの鳥に関する出版物の1つから取ったもの

RhodesMcLean1990,研究3)によって作られた98刺激(例:表1

▽ニュージーランドに住むスズメ目の鳥の線画14セットからなる

7通りの鳥の側面の線画

・歪めていない鳥の線画

・歪めていない鳥と平均的な鳥(14羽の平均化された合成画)の間の形の相違を17%、33%、50%の割合で強調した3つのカリカチュア線画

・相違を17%、33%、50%の割合で低減した3つのアンチカリカチュア線画

(詳細はRhodesMcLean,1990 Rhodes et al.,1987

 

・手続き

 

・実験参加者は実験用の個室でテストを受けた

・すべての刺激と教示はコンピュータに呈示され、カスタムデザインされたソフトウェアを使った

    実験参加者はランダムに刺激を判断するよう割り当てられ、刺激をランダムに異なった順序で呈示された

 

@    ある実験参加者は上述のカリカチュア生成プログラムで作ったカリカチュア・アンチカリカチュア化した鳥の線画の魅力を評定

A    別の実験参加者の組は刺激が平均であるかを判断

←刺激の実験操作と無関係に平均かどうかの判断と魅力の評定の間の相関を評価するため

Bさらに別の実験参加者の組は全ての刺激になじみがあるかを判断

n=各判断条件に約50)」

 

・「全く魅力的でない」−「とても魅力的だ」「とても典型的だ」−「全く典型的でない」(逆転項目)「全くなじみがない」−「とてもなじみがある」の10件法で判断させた

・評定課題の前に教示スクリーンで課題、評定課題の使用などについて説明した

・それぞれの画像はプロンプト(例:この鳥はどれくらい魅力的ですか?)や評定尺度の上のスクリーンの中央に呈示された

・実験参加者は「続く」を押して次の刺激に進む前に好きなだけ全ての刺激に対する評定を変えることができるが、前の評定項目に戻ることはできなかった

・実験参加者は尺度の全ての範囲を使うよう促された

・評定は約10分かかった

 

2-3) 結果と考察

 

・評定者間信頼性−平均、魅力、なじみの判断で別々に評価

・クロンバックのα係数を使用→順に.96.94.97

→判断は実験参加者全体で平均され、各鳥に対する各カリカチュアレベルの平均の評定値が得られた。

 

・平均値は別々に分散分析にかけられた(ANOVA

・反復測定の因子としてカリカチュアレベルを使用→3つ全ての評定に有意な効果

F6,294)=102.03(平均)、F6,324)=192.78(魅力)、F6,294)=376.07(なじみ) ps.001 (表1参照)>

・対応のあるt検定:全ての評定課題で全ての平均値が.001水準

・ボンフェローニの修正をした多重比較の有意水準:.007

 

○平均、魅力、なじみの評定に相関があったとき

 

平均となじみ(明確に相関あり r98)=.95,p<.001)は共に強く魅力を予測 rs98)=.94and.93,s.001

 

○なじみ、あるいは平均の効果が統計的にコントロールされたとき

 

残っている2つの変数の間の相関は弱まるが有意なまま rs98)=.46and.42,s.001

⇒鳥に魅力を感じるかは平均的な鳥に身体的にどの程度類似性しているかに比例

 

・顔の平均を操作するために使ったのと同じソフトウェアで類似性をコントロールしたので因果関係に疑問はありえない

    平均の操作→魅力の相違 

RhodesTremewan1996)の顔の魅力の研究と一致→効果は人間の顔に限定されない

    操作とは無関係に平均と魅力は強く結びつけて考えられている

    主観的になじみは刺激の平均と魅力の間の関係に寄与すると評価できた

    平均的であることはなじみに加えて魅力を予測することが相関に関するデータにより示された

 

⇒「平均的な刺激は単に知覚者がよりなじみがあるように思えるから魅力的なのではない、なじみこそが魅力に寄与しているにもかかわらずだ」というHalberstadtRhodes2000)の結論の裏づけを提供する

 

3) Experiment 2

 

平均を操作するテクニック−顔の数を変えたデジタル合成画を作る

 

予想

・人の顔同様、魚においても平均が魅力的ならば、魚の数が増えるにつれて魅力が増加

・主観的になじみが平均の魅力に寄与する(実験1と同様)

 

3-1) 方法と手続き

 

    実験参加者

 

心理学コース1年目の評価の一部として実験参加したオタゴ大学の73人の男女

4人の実験参加者は完全なデータが得られず、分析から除外

 

・刺激

 

32の魚のカラー写真が2冊の参考文献からスキャナーでコンピュータに読み込まれた

Last,Scott,&Talbot,1983Nelson,1994

・デジタル混合ソフトウェアモーフ(1994)を使用

150から200の間のランドマークポイントがそれぞれの魚の体、ひれ、えらに配置、結合され線画に(図1)

2個(Av2,n=164個(Av4,n=88個(Av8,n=416個(Av16,n=232個(Av32,n=1)で構成している魚を含む平均した合成画を作った

 

Av2の魚−2つの構成している魚(元画像32個から重複なしに選ばれた)のそれぞれの対応したランドマークポイントの平均的位置から新しい線画を生み出し作成

Av4の魚−Av2刺激のモーフィング(ある映像を次第に別の映像に変える映像処理)

以下同様−図1参照(詳細:Rhodes et al,1999

    63刺激−2,4,8,16,32の魚の合成画と共に魚の歪めていない線画

 

 

手続き

(実験1と同様)

 

・実験参加者にはランダムに全刺激の平均、魅力、なじみの評定が割り当てられ、各実験参加者で異なったランダムな順序で呈示された

・評定は約10分で無関係な実験と共に実施した

 

3-2)結果と考察

 

・評定者間信頼性は平均、魅力、なじみのあることの判断で高かった(順にα係数=.95.96.95

→評定値は実験参加者全体で平均化

 

・結果は3つ別々にANOVAで分析

→反復測定の因子として画像タイプ(単独、Av2Av4Av8,Av16,Av32)を使用

→全ての場合で画像タイプの主効果

F5,105=18.44(平均)F5,115)=11.07(魅力)、F5,110)=8.05(なじみ),ps.001)>

⇒全ての3つの独立でない指標は刺激の元画像、Av2Av4では増加しているが、続いて大体横ばいになった(表2

 

☝驚くべき?→No

←繰り返し平均することで、特に素人目には刺激は示差性がよりなくなる(図1

・元の刺激がより一様でなかったらor実験参加者がより熟練していたら

→魅力、平均、なじみはAv32の合成画まで増加し続けただろう

−どんな場合でも天井効果は概して顔にも見受けられ、結果は顔のデータと一貫

LangloisRoggman,1990Rhodes et al.,2002など)

 

・相関分析→平均となじみは共に魅力の分散を予測

(実験1HalberstadtRhodes2000)と同様)

−両方魅力と相関あり<rs63)=.75(平均).46(なじみ),s.001

−第二の変数の効果が統計的にコントロールされた時でさえ相関あり<rs63)=.69(平均),s.001 .26(なじみ),s.05

 

 

 

 

 

 

4) Experiment 3

 

○デザイン:実験2と全く同じであるが、刺激を自動車にした。

 

目的 @人工物でもmanipulated 平均性が魅力に影響を与えるかを調べる。

   A魅力と平均性の関係に対するsubjective familiarityの影響を調べる。

 

4-1)           方法と手続き

 

・被験者 89人の男女 Otago大学生 心理系1年生の評価の一部として参加してもらった。

・刺激  63枚の自動車のスケッチ(19の自動車会社)を実験2で述べた技術を用いて作成。

  32枚のデジタル画像のうち

   ・11枚 Dunedinの中古車販売店の展示を撮影

   ・14枚 中古車販売店のWebサイトからダウンロード

   ・ 7枚 中古車販売会社のWebサイトからダウンロード

−車は全て4ドアのセダンで19902000に製造されたものの全体像を撮影した。

実験2と同様、およそ120のランドマークポイントを結合し、スケッチを作成。

平均化して、higher order合成画を作成。

 

手続き

 

 実験2と同様、他のいくつかの無関係な実験とともに実施した。

 

4-2)           結果・考察

 

平均性, 魅力, 「なじみ」 それぞれの評定は再び高い評定者間信頼性を示した。(順にα=.96, .97, .97

→したがって全被験者の評定を、それぞれの指標、刺激のタイプごとに平均した。

 

・指標ごとのANOVAで、3つの尺度すべてにおいて主効果があった。

F(5,120)=7.09(平均性),F(5,195)=13.99(魅力),

F(5,115)=13.99(「なじみ」),p<.001

3つの指標において、オリジナル画像とAv2合成画像の間に有意差が見られた。(表2

    それ以上のレベルの合成画は、オリジナル画像が一様であるため、互いに違いはない。(図2

    これらの結果は実験1、2の結果や、顔の合成画像の評定と一致する(Langlois & Roggman,1990)したがって、新型の4ドアセダンのような任意の、人工的で均質の刺激でもmanipulated averagenessと魅力は強い関係を示す。

 

○相関分析をおこなったところ平均性は魅力と強い相関[r(63)=.54, p<.001]しかし、「なじみ」効果を統計的にコントロールすると相関は消える

 ・一方、「なじみ」は魅力と相関[r(63)=.74, p<.001

・平均性効果を統計的にコントロールしても、相関[r(63)=.57, p<.001

 

5) 総合考察

 

Halberstadt and Rhodes(2000)

・顔でないものの平均性と魅力の発見は「人間の平均顔への好みは、良質な配偶者を見分けるための適応だ」とする direct selection 仮説をくつがえす証拠。

・しかし彼らのデータはそれに代わるいくつもの説明を除外できていない。

・彼らが報告した相関とdirect selectionを両立させる説明は他にもある。

 

○本研究

・顔の平均性を操作する技術を顔以外の刺激に応用したところ、顔の場合と同様、魅力への効果があった。

・鳥、魚、車の平均性を高める(低める)と魅力も高まる(低くなる)。

・平均性が魅力的であるということは、顔と顔でないもの双方にあてはまる。

 

☆批判

・我々の画像操作技術自体が、別の説明をもちこんでいるという主張もある。

・顔の平均性が操作されている研究に対して批判が向けられており、操作の妥当性について議論が続いている。Alley & Cunningham, 1991; Langlois et al., 1994

Alley & Cunninghamの主張:デジタル合成手続きによって合成画には新たな特徴(対称性、なめらかさなど)が生じている。

 

○反論

・確かに平均性操作によって、そのような特徴は混入しているが、スケッチを使用することでその一部は取り除かれており、そもそもこの可能性は実験の目的とは無関係である。

・平均顔の魅力の原因が、平均性自体であっても、平均化手続きに関連した新たな特徴であっても、

@    平均性の魅力への影響は、顔に特有ではなく、direct selection仮説を支持しない。

A    「なじみ」を統計的にコントロールしたときの平均性と魅力の関係は、鳥、魚においては有意であるが、車においては有意ではない。(Halberstadt and Rhodes(2000)の結果と同様)

→「なじみ」は人工物(車、腕時計)の魅力は説明できるが、動物(鳥、魚、犬)は説明しきれない。

 

○人工物における「なじみ」と魅力の関係がはっきりしているのは、魅力的な特徴をもつものを選んで生産しているからかもしれない。

    この見解によれば、平均性も「なじみ」もそれ自体が、平均的な人工物を魅力的にしているわけではない。

    むしろ、進化的、社会的、文化的等何らかの理由で魅力的と判断される特徴に(間接的に)関与している。

    しかし、「なじみ」の魅力の強さを考えると(Bornstain,1989;Zajonc,1968)、平均的人工物の魅力には「なじみ」が影響しているのではないか。

    いずれにせよ、平均性自体で人工物の魅力を説明できない。

 

○動物(人を含む)において平均性は健康と発達の安定を表していることはよく知られており、優れた遺伝的性質を持った個体を見分ける手がかりとなる。

    この説によれば、平均性に対する好みは一般的な機能としての価値をもつ。

    同種の場合、良質な配偶者を見つけるのに役立つ。健康な個体は直接的には子育て、間接的には抵抗力が遺伝すれば子孫に利益をもたらす。

    異種の場合、病気の動物との接触や消費を避け、家畜を選び、捕食動物(敵)の健康や脅威を見積もる手がかりとなる。

    もちろんこれは推測に過ぎず、自然物と人工物の違いを引き続き調べている。

 

5-1)           結論

 

    平均範例(average exemplar)の魅力には少なくとも2つのメカニズムが関与。

@    familiar stimuliに対する一般的好み:これは人工物においても、人を含む動物においても見られた。この好みは、親密性自体によるものかもしれない、親密な関係、平均性、製造基準によるものかもしれない。

A    「なじみ」からは独立したメカニズム:人を含む動物の魅力判断に関係している。遺伝的、表現型的に良質であるサインへの好みを表しているかもしれない。

    こうした特定のメカニズムが今後の研究によって支持されるかにかかわらず、現在のデータが示しているのは、direct selection仮説は、なぜ平均顔を好むのか、という問いの説明としては不完全である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平均性

.94**(.46)**

.75**(.69)**

.54**(.06)

「なじみ」

.93**(.42)**

.46**(.26)*

.74**(.57)**

 


引用文献

 

Berscheid,E., & Walster,E  1974  Physical Attractiveness. In L. Berkowitz(Ed), Advance in experimental social psychology. New York : Academic Press. Pp.157-215

Buss, D. M. 1987  Sex difference in human mate selection criteria : An evolutionary perspective. In C. Crawford, Smith, M., & Krebs., D.(Eds.), Sociobiology and psychology : Ideas, issues and applications. London : Lawrence Erlbaum Associates. Pp.335-351

Langlois,J. H., Ritter, J. M., Roggman, L.A., & Vaughn, L. S. 1991 Facial diversity and infant preference for attractive faces. Developmental Psychology, 27, 79-84.

Langlois,J. H., & Roggman, L. A. 1990 Attractive face are only average. Psychological Science, 1, 115-121.

(以上は、顔の魅力と進化 顔と心 吉川佐紀子・益谷真・中村・真編 サイエンス社から引用した)

 

Halberstadt.,J., & Rhodes, G. 2000. The attractiveness of non-face average: Implications for an evolutionary explanation of the attractiveness of average face. Psychological Science,11,285-289.

蛭川立2000 顔の魅力と進化 顔と心 吉川佐紀子・益谷真・中村・真編 サイエンス社