実りある議論をするために:福澤一吉「議論のレッスン」生活人新書  NHK出版協会 2002

 

楠見 孝

 

 本書は,豊富な実例を通して、議論に関する知識、スキル、態度を学ぶことができる貴重な本である。

私たちは,仕事や日常生活で,議論したり,あるいは他の人の議論を聞いたり読んだりるときに,議論の難しさを感じることは多い。しかし,議論がうまくいかない原因を漠然と考えてはいるものの,その改善方法はわからないまま過ごしている。

そこで,本書は,6章に分かれ,読者が議論のレッスンに参加する形になっている。序章では,政治家やマスコミの議論を取り上げて,議論のどこに問題があるのかを取り上げ,入門編,初級編では議論のルールについて説明があり,中級編では,論拠の発見によって議論の構造を掴む方法について,例題を通して解説している。さらに,実践編では,新聞記事の分析,終章では時と場合による議論の使い分けの重要性が提案されている。

本書は,不毛な会議に悩むビジネスマンから,つぎの世代を育てている教師や親,そして,つまらない授業に不満の学生や生徒,さらに,議論を職業としている政治家やマスコミ人など,多くの人にとって,有益な本であると思う。