イギリスのいじめ問題

                     亀山真甫・本山悠子・加藤奈奈子・佐藤梓  

1、いじめの報告件数

 1999年に約4000人の児童を対象に行われたイギリスとドイツの合同調査によると、イギリスでは、24%の児童が定期的にいじめられていると答えており、ドイツの8%と比較して、いじめの被害者は3倍にもなっている。逆に加害者であると答えた児童は、イギリスで4.5%、ドイツで7.5%となっている。イギリスでは田舎の小規模小学校の方がいじめが多い点でドイツとは異なる。両国ともいじめは悪口と暴力にまたがり、男の子の方が女の子よりいじめに出会う確立が高い。

 2001年に行われた6歳から9歳の子供1600人以上を対象とした調査では、約40%の子供が定期的にいじめられており、加えて10%は被害者かつ加害者であり、4%強が根っからのいじめっ子である。加害者の方が精神的にも肉体的にも健康であり、被害者は風邪、せき、痛み、吐き気、おねしょ、悪夢、食欲不振などで苦しんでいる。このような症状を繰り返し訴えることはいじめられているサインである。

 最近の調査で、いじめは子供の一番の心配事であることがあきらかになった。10人の子供のうち8人が時々いじめられていると考えていることから、いじめはほとんど誰にでもおこりうると言える。19999月政府は、学校に対して反いじめ政策を設けさせた。しかし、この政策はあまり効果が上がっていない。人はみな違うという当たり前の事を、いじめはわかっていない。

 

2、いじめの原因

なぜいじめが起こるのか

→いじめる側が、自分の欠点や無能さから注意をそらすために行われる。

a)自己の問題点に直面し対応するのを避けるため

 b)自己の行動と、それが及ぼす影響に責任を負うのを避けるため

 c)自らの問題点から周囲の注意をそらすため(無能で攻撃的な社員が仕事を続けていく上で取る方法)

なぜその人がいじめられるのか

1)      ターゲットの絞り方

     利己的でご都合主義的―間違った所に間違った時にいたというのがいじめられる主な理由である

     有能で他人より優れている、有名である→相手の無能感を誘発する

     権威者、指導者

     派閥を避け、独立した考えを持つ

     怠け者と協力したがらない

     つけこまれる弱点が少なくとも1つある

…嫉妬と妬みが主原因

 

2)いじめを引き起こす出来事

     前のターゲットがいなくなること、組織の再編成、新しい指導者の就任

     人目を引く行動をする、認知度が高まる、知らないうちに周囲の注意をひく(女のいじめに多い)

     魅力があり、仲間から尊敬や信頼を受けていた

     規則や手順を乱すもの、違法なものに従わない

     いじめられている仲間をかばう→自分が次のターゲットになる

 

3)いじめられる人の性質

     有名性(嫉妬を刺激)、能力(妬みを刺激)

     知的、正直、高潔(いじめる側が軽蔑する)、信条が高貴で独立している

     ユーモアやウィットのセンスがある

     創造・想像力や感受性が豊か

     広い視野と長い考えで物事を捉えることが出来る

     清廉潔白、妥協を好まない、モラルが高い、間違ったことを見過ごしてはおけない

     完璧主義、人より独立心がある

     寛容、怒りにくい、平和主義的

     ノーと言えない、怒りを内にためがち、自己犠牲

 

3、いじめと家庭内暴力

 イギリスのいじめに関する調査によると、親子関係や家庭の事情などがいじめの加害者側にも被害者側にも影響を与えることがわかった。

 これによると、ひどいいじめにあっている少年の約42%が家庭内で暴力を受けていると答えていた。これは、両親のあまりにも過剰な抑圧や子どもの自己決定を認めないことが、子どもにいじめに反抗する意欲を失わせているのだと考えられる。暴力によって子どもが抵抗するという経験を失わせてしまっているのである。

 また、被害者としてだけでなく、こどもをいじめる側にまわすことにも両親の態度が影響しているようだ。33%のいじめをしている少年は家庭内暴力にあっており、28%のいじめをしている少女も家庭内暴力にあっていると調査結果でわかった。これは、親が子どもを家庭内で平等に扱わなかったり、子ども自身が両親に対して尊敬の念を抱いていないと言うことがいわれている。

 このようにいじめの背後には親子関係も影響している。イギリスでは、携帯電話のメールを利用したいじめも増えており、いじめの規模だけは拡大はしてないもののより暴力的ないじめ(野球のバットやナイフを使ったものなど)が増えてきている。

調査では学校が反いじめ的な態度を取っていることに半数の生徒が知らなかったと答えている。それが意味するのは、学校経営者がいま行われているいじめに対してほとんど対策を講じてないことである。まず、いま起こっている問題を対処することが必要なのではないだろうか。

 

4、いじめと自殺

 いじめられっ子は,いじめられることに対する怒りを自分自身に向けてしまいがちである。このことが自殺の原因になることが多い。毎年,少なくとも16人の子供がいじめが原因で自殺をする。しかし、公的なデータがないうえに、子供が死んでも死の状況がはっきりとしないために自殺と断定することができず事故死として片付けられてしまう例も多い。そのため、実際は毎年80人程度がいじめが原因で自殺しているのではないかと考えられている。

 イギリスのKidscapeがいじめに関する調査を行った。いじめられたことがあるという調査の協力者のうち45%が自殺を考えたことがあり,20%が自殺を試みた、という調査結果が出た。しかし、調査の結果は氷山のほんの一角を表しているに過ぎない。自殺が未遂に終わったとしても,その後の人生は非常に苦しい。これらの人達は周囲からの冷たい扱いに苦しんでいるのである。

 

<参考サイト>

     http://news.bbc.co.uk/hi/English/education/

     http://www.successunlimited.co.uk/