Class-Size Reduction Program

 

石原 卓

 

1、中間発表の位置付けについて

 近年いじめなどの教育病理と呼ばれるものがクローズアップされている。僕はこうした教育病理は生徒や親だけではなく、学校側の問題でもあると思う。そこで今回は、アメリカで行われている“Class-Size Reduction Program”について調査し、それが教育病理、特にいじめとどのように関わっていくのかを考えてみようと思った。今回の中間発表では、主にこの“Class-Size Reduction Program”について報告する。

 

2、概要

 “Class-Size Reduction Program”は、アメリカの文部科学省にあたるDepartment of Educationが打ち出した政策の一つで、日本でも近年少人数クラスの形成などという形で導入されているものである。このプログラムの具体的な内容は以下の通りである。

@     特に小学校低学年において、高水準の訓練を受けた教師を多数導入する。

A     質の高い授業を促進し、教師に職業的な技術向上の機会を提供する。

B     report cards」と呼ばれる刊行物で、親や地域に、学級規模の縮小がもたらす成果や生徒の成績の改善について報告する。

以上を受けて政府は合計16億ドルを教師採用などの費用にあて、年間に合計29千人を超える教師が採用された。これに伴って一学級の人数は平均5人程度縮小され、メリーランド州の小学校では12年のクラスの人数が20人以下となっている。

 この「一クラスの人数を減らし高水準の技術指導を受けた教師をつかせる」試みには、以下のような効果が期待されている。

@     生徒一人一人に対して、教師の注意がより多く注がれるようになる。

A     学習に関して堅実で信頼性の高い基盤が得られる。

B     他者に依存することなく物事を解釈することを学べる。

これらの効果についてDepartment of Education199911月に“Local Success Stories: Reduction Class Size”という報告書をまとめ提出した。この中の調査では、学級規模の縮小によって生徒の読解と算数の成績が大きく向上したことが示されている。また、19995月に同省が出した報告書“Reducing Class Size: What Do We Know?”では、こうした学習能力の向上は持続的なものであり、低学年時に小規模クラスで授業を受けた子の多くが、その後高学年で大規模クラスに移行しても高い成績を示し、高校やその先においても良い成績を収めている、という成果も報告されている。さらに同省長官のRichard Riley氏は、「クラス規模の縮小は身体障害者やマイノリティの生徒の教育に対しても効果がある」と述べている。またこのプログラムは教師に対してもさまざまな利点があるとされている。ウィスコンシン州の調査によると、「教師はしつけなどの問題に割かれる時間を減らし、より多くの時間を授業に充てることができるようになる」「生徒理解を深め、それぞれの生徒が学習過程のどの位置に立っているのかを知ることができるようになり、個別指導もしやすくなる」などが利点として挙げられている。これらは、上に挙げた生徒の学力の向上につながっていると考えられる。

 また授業や成績以外の面でも学級規模の縮小は成果をもたらす。Charles Achilles教授によると、学級規模の縮小は、生徒の行動を改善し、人間関係の作り方を学ばせ、学校行事への参加を促進させ、学校を生徒・教師・親全てにとって居心地の良いものとする雰囲気を作り出す、という点で「安全な学校」づくりの基盤となるという。

 アメリカにおいても様々な教育病理が発生している。そうした中で、このClass-Size Reduction Programに対する期待は大きいようだ。

 

3、参考資料

http://www.ed.gov/offices/OESE/ClassSize

・・・アメリカの文部科学省Department of Educationの公式サイト。今回取り上げたプログラムの具体的な内容についての情報を得た。

http://www.education-world.com/a_issues/issues067.shtml

・・・http://www.yahoo.com/で教育に関するページを調べていて見つけた。教育に関する記事が多く載っている。上記のURLは今回のテーマであるClass Size Reductionに関する記事のもので、プログラムのもたらす利点などについての情報を得た。また、文中で紹介した二つのレポート“Local Success Stories: Reducing Class Size”と“Reducing Class Size: What Do We Know?”もリンクとして掲載されている。