2001.12.12
英語リサーチ研究 中間発表
「児童虐待 ―カナダと日本の比較―」
教育学部 2回生(0022) 池田華子
1. 目的
近年、マスコミ等の注目を浴びることも多い「児童虐待」の問題であるが、その一因には地域社会との交流がなく、親(多くは母親)と子どもが密室で朝から晩まで1対1という状況が存在していることが挙げられている。
そのため今回は、比較的福祉政策が充実していると言われているカナダと、そうとは言えない日本を比較し、児童虐待の内容や件数にどのような特徴があるかということを明らかにすることを目的とした。
2. 方法
主にインターネットを用い、個人でリサーチを行なった。
カナダにおける「児童虐待」の実態を調べるにあたって、主に参考にしたページのURLはhttp://www.hc-sc.gc.ca/hpb/lcdc/brch/maltreat/cishl01/index.htmlである。また、日本の現状については、http://www.mhlw.go.jp/houdou/0106/h0621-4.htmlで調べた。
3. 結果(中間報告)
A) 「児童虐待」の4型とその内容
虐待の型 |
内容 |
身体的虐待 |
不適切な罰を与える/Shaken Baby
Syndromeなど |
性的虐待 |
性器への接触/性的行為を試みるor実際に行なう/(大人が)性器を露出するなど |
ネグレクト |
子どもの体(健康など)に注意を払わない/法に触れる行為を黙認する/放棄 /教育的ネグレクト など |
心理的虐待 |
家庭内暴力に子どもをさらす/心理的ネグレクト など |
*
Shaken Baby Syndromeとは、子どもを抱き上げて激しく前後に揺さぶることにより、子どもがむち打ち状態になり、目の裏からの出血や失明、精神遅滞や身体の麻痺を引き起こすことである。
身体的虐待については、カナダでも体罰として黙認されたり、躾と紛らわしかったりするなど、日本でよく知られているのと同じような問題点が指摘されていた。またこの4型のうち、カナダで最も実証率が低いのは身体的虐待で、これはその問題点と関係していると考えられれる。さらに、ネグレクトも一般に事件としてはっきりしている虐待とは異なり、しばしば発見が難しく、慢性的な状況を伴いやすいとされている。
B) カナダと日本における児童虐待の型の比較
まず、日本とカナダで児童虐待の型にどのような違いがあるのかを調べるため、総虐待件数に占める各型の割合を調べた。ただし、カナダの資料はThe Canadian Incidence Study of Reported Child Abuse and Neglect(CIS)から出ている1998年の報告から、日本のものは雇用均等・児童家庭局総務課が公開している「児童相談所における児童虐待相談等の状況報告」(2000年)を参考にした。
図1、図2を比較すれば明らかなように、児童虐待の4型のうち、カナダではネグレクトが最も多いのに対し、日本では身体的虐待が最も多く、ほぼ半数近くを占めている。また、日本では性的虐待の報告件数が少ないのも特徴的である。このあたりの関連性については、さらに調べていきたい。
ちなみに、2000年に日本全国の児童相談所が受け付けた虐待相談件数は18804件であった。しかしこれはあくまでも報告された件数であり、実際にはもっと多くの虐待が存在しているものと思われる。このことはCISの資料においても強調されている。