unit 9 記憶と忘却」の要約

 

記憶についての研究

・記憶と忘却についての実験的研究は、今から約100年前に始まる

ドイツの心理学者Hermann Ebbinghus が行った、3つの単語をでたらめに繋いだ意味の成さない語句を暗記しようとする試みそれらの語句は、全く意味・順序・構成をなしていないため、彼はすぐさまそれらを忘れてしまった。

1960年代

コンピューターの進歩により、記憶についてのワーキング・モデルが作られる脳を情報処理装置と捉え、情報の選択・符号化・貯蔵・維持・検索の機能からなっているとする。

・今日

記憶には、長期記憶と短期記憶があることが分かっている。長期記憶は活発に情報処理を行ってはいないが、この世界・または自分自身について知りうる全てのこと概念、におい、ことば、動きや個人的経験などからなっている。一方短期記憶は、現在使用しているような情報−友達と話しているとき、読書をしているときや、周囲の環境を見たり、聞いたりしているときに受け取る情報−をほんの少しの時間だけ記憶にとどめている。しかし、短期記憶は情報の受け取りを積極的に行ったり、繰り返して行ったりしないと、そこでいったんとどめられた情報は、長期記憶に移行しない限りすぐ忘れ去られてしまう。

記憶とはどういったものか

Sigmund Freudは、記憶や忘却によって、人間は自己誠実感や自己有能観を維持できるということを最初に発見した。彼はこれから、感情の抑圧という概念を生み出した。しかし、受け入れ難い考え方を無意識の領域に押しやっても、そのうちのいくつかは、夢に出てきたり、不意に口を滑らせて言ってしまったり、先入観として根強く存在していたりする。

・また、記憶は私たちの経験を性格に記録したものでもない。選択、維持、修正した情報は自分の考え方、期待、興味や恐怖感によって影響され、それを覚えるか忘れるかに分かれる。読む本が面白いかどうか、事件の目撃証言の信憑性もそれらに影響される。

     科学者によれば、私たちが何かモノ・事を記憶するとき、それらの一つ一つが脳で記号化されるよう、実際、脳は物理的に変化しているという。記憶についての研究の初期段階にあったKarl Lashleyは記憶痕跡または、さまざまな記憶に特別に関っている脳内の各部分を探し当てようとした。彼はその試みに失敗したが、最近になってUSCRichard Thompsonら研究者は、古典的条件づけによる瞬目反射学習などに見られる諸記憶が脳内の特定の部分にあるということを発見した。テンプル大学のDiana Woodruff-Pakは、瞬目反射なくなることがまさに痴呆症の兆候を示すものであると発見した。

 

岡田啓嗣(03.10.27)