Unit 20         Constructing Social Reality

 

私たちのもつ信念は強力であり、そのため私たちの現実に対する認識や解釈に影響を与えることがあります。主観的現実を作り出す力は、心理学者に「認知性制御」として知られています。個人や民族が自分自身の認識だけが唯一有効なものだと信じるとき、敵意と偏見が生まれ「われわれ対彼ら」という心理を引き起こします。

 

ジェイン・エリオットの小学校4年生のクラスおける実験によれば、私たちの持つもっともささいな種類の差異でさえ偏見を引き起こすことがあります。エリオットは敵対的な視点で考える恣意的な理由を与えることによって簡単に現実を変えることができる、ということを実証しました。エリオットはまず子供たちを、一方は「劣った」茶色い目の生徒達、もう一方は「優れた」青い目の生徒達、と2つのグループに分けます。この表面的な差異が制度上の差別の根拠を作り出したのです。劣ったとみなされた生徒達はそのように感じ、振舞い始めました。また、青い目の生徒達は自分たちが優れているのだという態度を取るようになりました。

 

別のクラスでの実験は、肯定的な期待が認識や行動に格段に影響を与えることを証明しました。心理学者のロバート・ローゼンタールと学校長のレノア・ジェイコブソンが、ある生徒達を学力が高いというようにランダムにグループ分けしたところ、その生徒達は教師の注意をより多く引くようになり、また教師によってより支持され褒められるようになったのです。その生徒達は普通の生徒を非凡な生徒に変える、承認と受け入れの雰囲気を作り出していました。教師達の期待はそれ自体が自己達成的な予言になっていたのです。

 

これらの2つのクラスでの実験は、私たちが自己を認識しまた行動する仕方にどれだけ社会的フィードバックが影響を与えているかを例証しています。また別の学校で、エリオット・アロンソンとアレックス・ゴンザレスはある特定のテーマにそっていくつかの専門の集団にわけた「ジグソークラス」というものを作りました。アロンソンとゴンザレスは、競争ではなく協力が、達成を促し自尊心をすべての生徒に植え付けるものだという彼らの理論を検証しようとしたのです。ジグソークラスの実験は大成功で、状況の持つ力は客観的な性格だけでなく、その参加者の主観的な現実も包括するものだということが実証されました。

 

私たちの認識を扱うということは広告のプロの専門技能でもあります。彼らは私たちが消費者や投票者として行なう決定を操作することの専門家なのです。彼らの目的は、私たちに自分がなにをしようとしているのか考えたり批判的に評価したりさせずに、彼らの製品にイエスといわせることです。

 

心理学者のロバート・シャルディーニは、セールスマンや資金調達者やPRコンサルタント(広報担当者)や広告業者が使う戦略について研究してきました。これらの戦略はそれぞれが基礎的な心理学的原理によって規定されたカテゴリーに分類されます(下の図を参照してください)。シャルディーニの研究は、私たちが迎合的な行動や、偏った行動や、対抗心をもった行動をどれほど簡単に行うかということを示しています。社会心理学者はこれらの影響に関する原理を、人々をより自立させ、より寛容にし、またより協力的にするのを助ける新しい戦略を開発するのに使いたいと希望しています。

 

説得の技術は、極端な場合危険な目的に使われることもありえます。かつて文鮮明の統一教会の幹部だったスティーヴン・ハサンは、統一教会を脱会しカルトカウンセラーになりました。彼は自分の仕事において、社会心理学的原理が他者の行動や思考に影響力を維持するためにどのように使われうるかということに関して独自の理解をしています。一般的な人はカルトに入信するような人間は特別に弱いか、何らかの点で欠陥があると考えるかもしれません。しかしハサンは、カルトに入信する人々は非常に正常な人間であるが彼らの人生において特別弱くなってしまっている時期にカルトにつかまってしまうのだ、と主張します。カルトにおいては、信者は自分のために自力で考えるということは許されていません。カルトの指導者たちは暗示的な問題や、催眠術や、睡眠遮断や、思考停止法などのやり方で信者の支配を維持しようとします。この極端な現象は、人が自分の存在している非常に強い影響力をもつ状況によって主観的な現実にどれだけ影響をうけるかということを示しています。