UNIT 15     The Self 

 

Objectives

 

1.人格(以下同じ)の定義

2.人格のタイプ理論と特性理論を比較

3.人格の「ビッグファイブ」のリストと説明

4.フロイトの理論である、人格の発達と意識上の自己におけるイド・自我・超自我の役割の説明

5.ポストフロイト派理論がフロイト派理論とどのように違うのかを説明

6.主要な人間性心理学理論とその貢献の説明

7.社会的学習と認知理論、そしてそれらの貢献の説明

8.様々な理論的観点の中で、人格についての最も主要な5つの仮説の列挙

9.人格の標準検査と投影法の有用性と精度

(2003.11.17 一原理彦)

 

Program Summary

 あなたは、自分が誰であるかをどのようにして知りますか?あなたは、人の中にいる時と一人でいる時、同じ人ですか?本当のあなたは誰ですか?プログラム15では、わたしたちが自己の概念、つまり自分自身の同一性の意識をどのようにして発達させるのかが明らかになるでしょう。

 

 長い間、哲学者たちは自己同一性の問題を解こうとしてきた、つまり、個人の性格や人格を決める人間の行動における一貫性と違いを説明しようとしてきた。1890年、ウィリアム・ジェームスは、同一性の3つの側面を区別した。世界の認識と、思考者としての自分自身の認識と、他者に印象を与える認識である。

 

 20世紀のほとんどの間、自己の概念は、アメリカ心理学を支配していた行動主義者によって“不明瞭である”と考えられていた。フロイトでさえ、自己の意識を、道徳意識や原始的な無意識ほど重要であるとは考えていなかった。しかしながら、今日多くの心理学者が自己の概念がどのように行動に影響を与えるのか、また逆に、行動がどのように自己の感覚に影響を与えるのかを理解しようとして、人間の欲求や恐怖や希望や決定や期待を説明することに専念している。

 

 カール・ロジャースによる1940年代の人間性心理学者の動きは、自己意識に注目しており、それを人格形成における努力として特徴づけた。ロジャースは、積極的な自己像は人格形成を高めると信じていた。

 

 他の心理学者は、個人の意識的な同一性の認識に言及するために、自己概念という言葉を使う。自己概念は、自己観察者として機能し内的基準に従って行動を規定することによって、行動を形成する。このような方法によってわたしたちは、知識群やスキーマを組織化し、わたしたちが物事を正しく考える方法にあうように適合させる。もし自己概念がよいものであれば、理想の水準に沿って生きようとする。もし自己概念が悪いものであれば、悪いように行動したり感じたりする。

 

 しかし、他の心理学者の中には、わたしたちは自分自身を表現しているのだから、他人はわたしたちが自分自身を見るように私たちを見るだろう、と理論立てる人もいる。わたしたちはお互いに行動し、反応していて、わたしたちが自分自身であると信じている人物像を形成し、確認している。だから、落ち込んでいる人はまるで不適合であるかのように扱われることがよくあり、幸せな人は他人から積極的な反応を引き出す傾向があるのだ、という見解を示す研究もある。

 

 内気な人は、この過程を鮮明に例証している。一般に、彼らは不適合を感じ、失敗と拒絶を懸念する。彼らは、消極的な反応をされると、自己疑念が強化される。彼らが判断される場面、例えば会議やパーティーやその他の社会的・仕事上の場面において、彼ら自身の低い自尊心のせいで彼らは不安になるのである。

 

 失敗を恐れる人は、自分の自尊心を守る必要があるので、挑戦を回避する方法を発展させる。彼らはまた、失敗に対して自分を責めるのを避けるために、覆いをかけて自己像を守る。彼らは、重要な約束に現れるのを引き延ばしたり忘れたりしがちで、失敗した行動のいいわけをしたり、それによる痛みを鈍くさせたりするために、アルコールや薬物を乱用しさえする。

 

 人間は時々、自分自身にハンディキャップをつけるが、社会もまた不利な条件を負わされている。種族や性差や社会的偏見によって、積極的な自己イメージや積極的な行動が妨げられたり、抑えられたりする。アメリカ原住民のアルコール依存や自殺率が高いことや、都市部のユダヤ人の絶え間ない絶望や怒りを考えてごらんなさい。

 

 より希望のもてることとして、人格の別の要素、つまり創造的な自己が新しい現実を創る能力を証明している。どの文明においても人間は、形作られ、装飾され、色づけられ、再構成されうるすべてのものに対して、個性という印をつけてきた。ちょうどカール・ロジャースが、人間は本来達成に向かって動くと信じていたように、アルファード・アドラーはこの現象を、生得的な優越への努力と呼んだ。

 

 しかし、社会的評価は創造性を傷つける可能性がある。研究者テレサ・アマバイルは、7歳から11歳までの子供は、自分の作品が他人に評価されると思っている場合には、創造的でなくなることを発見した。本当に創造的になるためには、社会的望ましさとは独立した自己評価の感覚が必要である。人間には世界を新たな、独特の、型にはまらない方法で経験する自由が必要である。

 

 へーゼル・マーカスは、人間の自己の本当の基盤は、まさに社会的に得ることができると主張する。わたしたちは普通、個々人が文化の創造し形成すると考えているが、マルクスは、文化の考え方や文化の実践がわたしたちを形成し、人格形成は社会的努力であると主張する。この個人と文化の相互構築は、すべての社会の人工物において見受けられる。

 

(2003.11.17 本多 沙希)