Unit 26   Cultural psychology                                          1月19日 
 

[Objectives]                                                                担当:高原朋子

TV番組を見た後、次のことができるはずである。

1.      行動を説明するときに個人と集団の要因に与えられる重みという観点から、東洋と西洋の文化の違いを説明する。

2.      西洋の個人主義の価値観がどのように表れているか例を挙げる。

3.      アフリカ系アメリカ人が偏見と戦うのに役立ったアフリカ文化の価値観を説明する。

4.      ラテン系移民をうつと疎外感の危機にさらした要因をいくつか挙げる。

5.      心理学が社会において最もややこしい問題のいくつかを解決する助けになるという証拠、そしてその逆であるという証拠を挙げる。 

[Program Summary]

前半担当 荒井理江
 

  文化は私たちに複雑な影響を及ぼしている。それぞれの文化は、ファッションや言語、食生活といった特徴において明らかな違いがある。そして、自分達が誰であるか、自分達を取り巻く世界をどう説明するか、そして、別の人々とどうやって相互作用しあうかということを形成する際にもまた、微妙な違いがあるのである。プログラム26では人格、信念、価値、そして感情を形成するいくつかの違いについて考察する。

 文化は、他者の行動をいかに説明するかという事を形成している。UC BerkeleyKaipeng PengStanford UniversityMichael Morrisは、魚の漫画のデザインを使って、東アジアと北アメリカそれぞれで育った人々の社会的認知の違いを調査した。なぜひとりぼっちの魚がそのように振舞ったかと尋ねられたとき、アメリカ人は個人的な理由に焦点を当てたのに対し、アジア人はそこに集団的な理由を見出した。そのフィルムで、ペンはこれと似たポイントを示す個人的物語を関係付けた。それは、アジア人が集団の影響をより強く重要視するのに対し、アメリカ人は個人の人格という不変の側面に焦点を当てる傾向があるということである。

 これらの社会的認知の違いは、自己を認知する際の文化的な違いにまで広がっている。Stanford UniversityHazel Markusと京都大学の北山忍は自己と文化はいかに継続的にお互いを構築しあっているかということを調査している。文化が異なれば、この個人と文化の相互構築もかなり異なってくるという結果が示され得るのである。Markusと北山は独立したあり方と相互依存したあり方という2つの結果を示した。独立したあり方とはアメリカやほかの西洋の文化が良い例であり、それは個人の責任、自分自身のコントロール、独自性、そしてその人自身が自信を持てる性質に注目することによって特徴付けられているものである。対照的に、相互依存のあり方とは、東アジアの文化に代表され、他人の欲求に敏感であり、個人の欲求を超越するものであるということ、そして個人がより向上させなければならない側面に注目することによって特徴付けられるものである。パーティでアメリカ人のホストはお客にセルフサービスで自由に食事をするようすすめるのに対し、日本人のホストは全てのゲストに合うよう気を配るのである。これらの文化間の違いは、プロテスタントの価値観と仏教的なあり方との間の違いを反映しているのだ。

後半部分:中西梓

 我々はアメリカ国内にもまた、文化の豊かな混合を見出すことができる。James Jones(デラウェア大学)は、西アフリカ文化と奴隷文化が、現代のアフリカ系アメリカ人の文化に与える影響について研究した。そして彼は時間、リズム、即興、口承、そして精神性の概念化に対し(西アフリカ文化と奴隷文化の)深い影響があったことを発見した。結果として生まれた複雑な経緯は、先入観をくつがえすことに役立ち、またアフリカ系アメリカ人の文化は、この上なくすばらしい言語技術を有し、その周知に知れたいくつかの文化的貢献の論拠を提供している。同じように、文化様式によってネイティブアメリカンは、何世紀も耐え忍んできた、ときとして過酷な扱いに適応することもできた。Joseph Trimble (ハーバード大の先端研究のためのラドクリフ研究所の研究員)はネイティブアメリカンが、アメリカの主流の文化にどのように適応しそして影響を与えてきたかを研究した。ネイティブアメリカンの文化は歴史的に苦しんできた、なぜならアメリカの主流の文化は、ネイティブアメリカンの人々を元気にさせる寛容さと自尊心を利用し蔑んできたからだ。

  今、新しい文化に適応する時、特に個人の独特の信念と人生の過ごし方を表現する余地がほとんどないときにはストレスが多いことがわかる。Ricardo Munoz (サンフランシスコ大)はラテン社会での文化適応の心理を研究した。アメリカにおける、ラテン系移民それ以外の人々の違いのひとつは、メンタルヘルスのサービスを求めることに乗り気であるかどうかということだ。このようなサービスに関する両者の文化的価値観と言葉の壁により、ラテン系移民は心理学者を利用することを比較的好まない。とりわけメキシコ人移民者の社会においてうつ病の割合が急速に上昇していることを考慮すると、D.Munozは更なる問題の発展を主張する。移民者が家族や社会支援のネットワークから切り離され、アメリカにとどまる傾向が増大するにつれ、彼らの心理的苦悩のレベルは高くなる。社会支援は我々みなに重要であるけれども、深い家族の絆が営まれてきたラテン文化にとっては、社会支援はとくに文化の中心となる部分なのだ。彼らの文化価値がアメリカの独立と個人を重んじる主流文化としょうとつするにつれ、メキシコ人移民者とその子供たちは困惑し、拒絶感を抱き、気落ちしてしまうだろう。

  世界の人口が増え、人々が地球上のさまざまな地域に住むことに自由さをより感じるにつれ、また技術によってさまざまな文化が互いにより多くの接点を持つようになるにつれ、我々は心理学者として、人間として、個人間と個人内に沸き起こる葛藤を解決するのに新たな困難に直面するだろう。

 

 

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