UNIT24 Applying Psychology in Life                                           12月22日 
 

[Objectives]                                                                担当:杉野 築        

ユニット24は、さまざまな分野における心理学者が、彼らの知識、研究技術、洞察を、人的要因(ヒューマンファクター)が関連する領域(たとえば、睡眠研究、宇宙旅行、子どもの目撃証言、平和構築など)に、いかに適用するのかに焦点を当てる。

 ユニット24を視聴し、指定された文献を通読すれば、以下のことができるようになるはずである。

@社会心理学的原理を社会問題に適用することを通して、心理学者が、いかに人間の状態を改善しようとしてきたかを説明する

A宇宙旅行者にとっての少なくとも3つの重要なストレス要素を明らかにし、こうした問題の研究が、どのように地球上の人々にも役立つのかを議論する

B「平和心理学(peace psychology)」と「紛争交渉(conflict negotiation)」をそれぞれ定義する

C子どもが目撃証人となる時に法律家が直面する問題について説明する

D十分な睡眠がとれていないことを示すいくつかの徴候を明らかにし、睡眠欠乏と関連するリスク(危険性)を明らかにする

[Program Summary]

前半担当 辻真衣子

 これまでのプログラムで、我々はどのように心理学者がニューロンやホルモン、動機や必要、知覚や意思決定、コミュニケーション、知性、創造性、批判的思考、そしてストレスを研究しているかを見てきた。プログラム24では、個々人や国家のため、グローバルな問題を解決したり生活の質を改善したりするために、心理学者はどのようにして彼らが洞察したことを仕事に活用しているのかを見ていこう。

 ひとつの主要な問題に睡眠不足があり、4千万のアメリカ人が直面していて日々増加しているのであるが、これは人々の健康に重大な影響を及ぼし得る。James Maas によれば、十分な睡眠をとっていると思っている我々のうちの大多数は、実はそうではない。高校生と大学生のなんと95%が何らかの睡眠障害を抱えており、ほとんどの勤務交代制の労働者は少なくとも週に一回は仕事中に居眠りしてしまう。人々はより生産性であろうとして寝るのを控えたりするが、しかし、数学の問題に取り組むときの人のMRIスキャンを見ると、睡眠不足が正常な脳の働きを妨げていることがわかる。それはまた、正常な精神機能にとっても危険である。例えば、もし十分な睡眠をとらなければ、我々は記憶を効果的に結合させることができないこともある。あなたは睡眠の計画を、睡眠に割けると考えている時間に基づくよりもむしろ必要に基づいてたてるべきである。大人なら8時間、高校生なら約9時間の十分な安眠が必要である。

 睡眠不足につながり得る睡眠障害に、睡眠時無呼吸がある。これは3千万ものアメリカ人に影響をしており、呼吸が断続的に停止しながらひどいいびきをかくといく特徴がある。その原因は、上部気管の通りが悪くなることであり、それは一晩で数百回起こる。また別の睡眠障害に、これはもっとまれではあるが、睡眠発作がある。これは日中に強い衝動によって突然レム睡眠が襲うというものである。

 宇宙旅行の心理学的側面はほんのひとにぎりの人々にしか直接関連しないが、ゆくゆく我々の子孫が直面しそうな問題を予期し、伝達するために、心理学的調査にとって科学技術的調査と足並みを揃えることは重要である。宇宙旅行の継続期間が長くなり、乗員がより多く、そしてより多様になるにつれ、心理学者は宇宙旅行の心理学的、生理学的な局面への取り組みにおいてさらに重要な役割を担うだろう。宇宙では、不安や鬱、退屈、孤独、敵意といった、医学的、心理学的問題を引き起こす様々なストレス要因がある。これらの問題は宇宙飛行士や未来の宇宙旅行者の、健康や士気、そして遂行能力を脅かすのである。

後半担当 宇津木洋志

  宇宙における制限は、医学的であるよりも心理学的である。宇宙旅行に独特の特徴に対する人間の反応を考慮に入ながら、心理学者は宇宙船の環境を設計したり個人や集団の適用方略を教えるのを手伝っている。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNick KanasNASAMal Cohenは、隔離と負担が宇宙飛行士に様々な面で影響を与えるということの証拠を提供する。そこではしばしばストレスホルモンの増加や、いくぶんかの知的能力の悪化や、動機づけの低下、緊張や敵意の増加、社会的ひきこもりが見られる。

  社会的に快適な宇宙船の環境を作り出すために、心理学者は対人コミュニケーションに影響を与える声や表情や動きの避けることのできないゆがみを克服するための技術に取り組んでいる。彼らはまた宇宙飛行者が退屈を克服するのを助けるための技術を研究している。そしてより多くの、より多様な乗組員を宇宙船に乗せるにつれて、心理学者は職業上の地位や、言語の種類、さらには文化の差異の衝突によって起こる問題を解決するのを助けることが必要になるであろう。

  心理学が重要な貢献をなしている三つめの領域は法廷である。そこでは毎年300万の子どもたちが目撃証人の役目をする。裁判の前や裁判の間にこれらの子どもたちから話を聞く人たちは、しばしば実験心理学の訓練を全く受けておらず、質問の方法が子どもの記憶に影響を与えかねないやり方に気づいていないかもしれない。コーネル大学のStephen Ceciによると、暗示的なインタビューが繰り返されると子どもが新たな記憶を作り出してしまうことがある。子どもはこれらの記憶を本物であると信じるので、しばしばそれらと現実の出来事からできた記憶とを区別することが難しくなる。面接者が誤った記憶を「植えつける」つもりはなかったり、彼らが用いる面接の技術が時には治療的な環境として理想的なものであるかもしれなくとも、面接者が刑事裁判における間違った有罪判決を引き起こしてしまう可能性があるのである。

  応用心理学が宇宙旅行と関連するのと同じように、紛争解決の領域では行動心理学、社会心理学から生化学、環境工学に至るたくさんの学問領域から得られた知識が組み合される。平和の研究には心理学者、社会学者、政治学者や、他の核戦争防止や国家間の平和の促進にかかわっている人たちの参加が必要である。研究の範囲は軍備交渉の学問から、いかに人々が核戦争の可能性に対して反応するかということにまで及ぶ。

 マサチューセッツ工科大学のJared Curhanは、若者が交渉するためのプログラムを発展させた。彼は若者たちに、暴力的な方法に訴えることなしに仲間との争いを解決するといった彼らの目標をうまく達成することを教えている。彼はこれらの同じ技術をビジネススクールやロースクール、政府機関において行う講習に持ち込んだ。人々が学ぶ大きな教訓の一つは、交渉とは自分が欲しいものを得ることではなく、自分の欲しいものを変えることであるというものである。

 全学共通科目英語(教育科学)後期のページへ戻る