UNIT22 Psychotherapy(紹介ページへ)   12月15日 作成:大棚千絵

 

[Objectives]                                                                       担当:藤本千尋        

 1. 精神障害を同定し治療することに対する初期の研究方法を述べられること。

 2. 精神療法に対する主要な研究方法を確認できること。

 3. 精神科医・精神分析家・臨床心理士、はその訓練と治療方法の志向においてどのように異なるかを述べられること。

 4. 精神分析の主な特徴を確認し、それぞれの目的を確認できること。

 5. 様々な行動療法の目的を説明できること。

 6. 恐怖症を扱う際,反対条件づけ(counterconditioning)はどのように効果的に用いられるのかを説明できること。

 7. 全ての型の認知療法の背後にある、主要な理論的根拠を手短に述べられること。

 8. 精神外科の機能、精神病を扱う際の電気ショック療法について述べられること。

 9. 薬物療法の一般的な形態と、それによってメンタルヘルス・システムがどのように変化してきたかを確認できること。

 

                                                                                    

[Program Summary]                             担当:大棚千絵
 何か悩みを抱えた時、誰に対して慰めや助言を求めますか? 私達の多くは、家族か友人と答えるでしょう。でも、問題が長期の、深刻な苦悩であった場合、友人や身内の人は問題の解決を促すような関心や技術はおそらく持ち合わせていでしょう。この時こそ専門家の助けを求める時かもしれません。
 22課では、治療が適用できる領域、治療法はどのように発展してきたか、治療が効果を発する悩みの種類について考えてゆきます。

 治療法は大きく2つのグループに分けられます。  1つは生物医学的療法、身体的原因に焦点を当てるもの。もう1つは心理学的療法、本人の考え方、感じ方、行動の仕方を変えるのを手助けすることに焦点をあてるものです。
 生物医学的手法では、精神の不調を、繊細な心の環境を乱すような生化学的な出来事の結果としてみます。精神医学と神経生物学は病気の根底にあると思われる病態や症状を同定するのを専門にしています。

 最も過激な生物医学的療法の1つに精神外科があります。前頭葉切截術(ロボトミー)は、極端な例にしか使われませんが、前頭葉をつなぐ神経線維を切断するものです。しかしながら、統合失調症や強迫神経症の喚起を除去していても、多くの人は術後は病気の時よりも悪くなると主張します。つまり、ロボトミーの後、患者さんははっきりと記憶したり先の予定を立てることができなくなったり、もはやまともな一連の情緒を感じなくなる事もありえるのです。

 電気ショック療法は脳の電気的・化学的活動を変えるものですが、これもまた物議をかもしています。電気ショック療法の支持者は薬物療法に耐え切れない抑うつの患者さんにとっては効果的な治療法であると主張します。しかし電気ショック療法が誤用されたことから多くの州では法による規制がしかれてきました。

 生物医学的療法の真の革命は1950年代、鎮静剤と抗精神病薬の使用により始まりました。薬物療法は苦痛を和らげるだけでなく、心理療法をも可能にしたのです。しかしながら薬物が危険な点は、過剰に投与したり十分に教育されていない病院スタッフによって誤用されるかもしれないことです。

 生物医学的療法のもう1つの大きな革命は現在も進行中です。研究者たちは統合失調症、鬱、アルツハイマー病の遺伝的な原因解明においてすでに多大な進歩をみせています。  研究者たちはまた、こうした遺伝的体質が病気の進行に作用するような環境要因とどのように影響しあうのかの研究も進めています。

 心理療法は(上記の方法とは)全く違った手法で心理的問題を扱います。心理療法には少なくとも250のいろいろな手法がありますが、一般に4つに分類することができます。力動的心理学(あるいは精神分析療法)はすべての行動は、幼い頃のトラウマや解決していないままの葛藤などの内部衝動によって左右されるとみなすものです。
 ジグムント・フロイト(Sigmund Freud)が19世紀末から20世紀初頭にこの観点を展開しました。精神分析学(力動的心理学の手法に基づく心理療法です。)では、患者さんの治療は問題を徹底的に論じる事を基本としています。無意識下の緊張を、自由連想法・夢分析・内観法・極限カタルシスなどの多様な手法を用いて分析し解明することで変化を生じさせるのです。

 長年にわたり精神分析療法はフロイトの編み出した手法を修正してきましたが、目的はいつも同じ、患者さんの症状を治すことだけでなく、患者さんのパーソナリティ構造をも変えることにありました。治療は時に数年を要し、患者さん による積極的協力が必要です。同時に、もっと短期の、時間を区切った、あまり集中しなくてよいような治療もまた多くの患者さんの助力に効果を発せます。

 もう1つ別の手法、行動療法は無意識下の衝動や過去・人格などには目を向けず、替わりに問題行動に関心を向ける手法です。行動療法家は患者さんに新たなより健全な行動を教えようとする時、強化や条件づけといった手法を用います。

 認知療法は患者さんに不安や低い自尊感情を引き起こす、問題のある態度や不合理な信念、否定的な感情をいかにして変えてゆくかを患者さんに教授します。認知療法家はまた患者さんに人生の重大な局面の捉え方を変えるようにも教授します。合理情動療法*、これはアルバート・エリス(Albert Ellis)が1960年代に確立した認知療法の形ですが、ここでは心理療法士は患者さんに、本人を縛っている"...すべきである(shoulds)"、"...oughts"、"...しなければならない(musts)"とはどういうものかを理解するよう教授し、本人がそうでありたいと願っている人生を選べるようにするのです。

 *訳者注:エリス本人の改定により、最近では「合理情動行動療法」と呼ばれているようです。

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