認知心理学演習「認知研究におけるデータ解析とモデル構築」

 

水曜 3時限 第一演習室     担当 楠見  

 

  本演習では,学習,記憶,言語,知識,思考,社会的認知、感情、認知発達,などの高次認知過程を明らかにするための方法として、データ解析法とシミュレーションの技法を、最新の文献、ソフトウエアに基づいて検討する。さらに、各自の収集したデータを解析し、モデル化することを目指す。具体的には、(1)メタ分析による複数の研究の統計的検討,(2)共分散構造分析による認知プロセスの検討、(3)データマイニングツールを用いた自由記述や連想データの分析,(4)データマイニングツールを用いた多変量解析とニューラルネットワークの統合的利用,(5)ニューラルネットによるモデル化、(5)システム理論を用いたモデル化,(6)進化シミュレーションなどのテーマを取り上げたい。そのほか,参加者の希望によって,他の話題も取り上げたい.

 

手法ごとにそれを取り上げる1-2名のグループを組んで,(1)背景となる文献の紹介,(2)利用法の説明・デモ,(3)できれば,自分たちのデータを利用した結果を紹介する.最終的には,取り上げたすべての手法について,自分のデータを使って研究できるようにすることを目標とする.

学部生は大学院生のグループに入って分担する

 

日程表

 

1. 5/2  小島 代表的な階層型ニューラルネットワークモデルの基本アルゴリズム

 

2. 5/9  渡部・杉森 心理学における進化シミュレーションの目的と方法 

 

3. 5/16 松田・平岡 システム分析(STELLA)

 

4. 5/23 平山    メタ分析(1)

 

5. 5/30 安藤・浅井 自由記述文の統計解析:テキストマイニング

 

6. 6/6  小島 階層型ニューラルネットワークモデルのプログラミングとシミュレーションの例

 

7. 6/13   杉森 進化シミュレーションを使った論文紹介(Axelrod,1986; Yamagishi & Takahashi, 1992)

                  渡部 心理学における進化シミュレーションII

 

8. 6/20 松田・平岡 共分散構造分析

 

9. 6/27 平山    メタ分析(2)

 

10.7/4  安藤・浅井 InfoMiner with WinAiBASEを使っての自由記述文解析例

 

11.7/11 渡部 Clementineによるデータ分析

 

 

7/18 行動計量国際会議(阪大)

 

7/30-8/1 集中講義「心理・教育測定論」(分散分析と多変量解析) 狩野先生

 

 

文献・リンク集

 

比較的入手しやすい主な参考文献を挙げる.各自探してほしい.

 

(1)   メタ分析

 同一の研究課題に関して独立して行われた研究結果(仮説検定,相関,効果量など)を統計的に統合して,全体としての仮説検定や推定値を求める方法.サーベイ研究において重要な武器.

MullenB.(小野寺訳) 2001基礎から学ぶメタ分析 ナカニシヤ出版 \2800(CDROM)

 

(2)共分散構造分析

 多変量データを用いて,観測変数と構成概念間の関係に基づいてモデルを構築する方法.データ解析とモデル構築において有用.

狩野裕 1997 AMOSEQSLISRELによるグラフィカル多変量解析 現代数学社 \2600

Bentler, P.M. 1995 EQS for Windows:User Guide

 

(3)   自由記述データの分析

 自由回答,発話,連想などのテキストデータから,単語の抽出,同義語処理などをおこない,単語のクラスタ,設問や回答者属性との連関を明らかにするための対応分析をおこなうデータマイニング手法.電子調査の普及によってテキストデータの入手が容易になり現在注目されている.

  InfoMiner with WinAiBASE (統計数理研究所+平和情報センタ)マニュアル 

 

 () データマイニング

 データから金を掘り起こすように,データから潜在する構造,規則を抽出し,ビジュアル化,モデル化をおこない,仮説検証,予測をおこなう手法.フィードフォワード型ニューラルネット,自己組織化ネット,決定木,相関ルールなどを用いる.

  Clementaine5.0日本語マニュアル SPSS

 www.spss.co.jp/product/ALL/clemen/index.htm

豊田秀樹 2001 金鉱を掘り当てる統計学:データマイニング入門 講談社ブルーバックス

 

 ()ニューラルネット

脳の神経回路に着想を得た認知過程のモデル化技法.データ解析にも使われている.

PDP++  http://www.cnbc.cmu.edu/PDP++/PDP++.html

教育研究用シミュレータ。McClellandRumelhartが開発し、改良されたもの。O'Reilly & Munakata(2000)で紹介されているモデルの検証にも使われている。

 

GENESIS  http://www.bbb.caltech.edu/GENESIS/

教育研究用の定評あるシミュレータ GENESIS のオフィシャルサイト。C言語で書かれたシミュレータでシングルニューロンから大規模ネットワークのシミュレーションにまで対応している。カリフォルニア工科大学などで授業にも使われている。

 

NEURON neuron.duke.edu/

GENESIS とならんで定評のあるシミュレータ。シングルニューロンの動作を記述するために開発されたシミュレータだが、ネットワークモデルを作ることもできる。

 

Stuttgart Neural Network Simulator  http://www-ra.informatik.uni-tuebingen.de/SNNS/

Elmanも最近の論文ではこのシミュレータを使っている。

 

SPSS Neural Connection http://www.spss.com/neuro/

市販のデータ解析用ソフト。多層パーセプトロン、放射状基底関数、コホーネン自己組織化ネット、ベイジアンネット等を用いて、予測、分類、時系列分析などができる。データ処理の流れをマップ表示したインタフェースに特徴がある。

なお、ニューラルネットを含むデータマイニングツールとしては、下記のソフトがある。

 

(6)システム分析

問題とする対象システムにおける構成要素(人,機能など)または要因とその関係(数学的関係)を特定して,明示的に表現し,その時間的変化をシミュレーションによって検討する手法.

 

STELLA使用説明書

森田道也 1997 経営システムのモデリング学習 牧野書店 (CDROM付)

 

(7)進化シミュレーション

生物進化に着想を得て,個体,集団,文化,環境間の長期的相互作用を検討する手法.

高木英至 http://homepage1.nifty.com/eiji_takagi/esp/index.html デモプログラム有

科学シミュレーション研究会 2000 パソコンで見る生物進化 : シミュレーションでさぐる生物の生き残り戦略 講談社ブルーバックス(CDROM付)

 

そのほかの手法,ノンパラメトリック検定法,分散分析法,共分散分析法,時系列分析法などを取り上げても良い.