認知心理学概論Ⅱ 119日 話題提供   文学部3回生 友田 啓介

 

聴覚について

 私たちが日常生活の中で得る全情報の中で、聴覚からのものは全体の2割程度だといわれている。全情報のうち約7割が視覚からの情報だと言われており、聴覚は量からいえば視覚ほど多くの情報をもたらさないといえる。しかし、例えば背後から迫ってくる危険を察知できるといったように、聴覚でなくては得られない情報も数多くあり、情報源としては重要であるといえる。ここでは、聴覚が音という刺激を知覚する基本的な仕組みを紹介していきたい。

 

音の物理的属性と心理的属性

 音というのは空気の振動である。その振動には、音圧、周波数、波形の3つの属性がある。音が聴覚器官を刺激すると、これらの物理的属性はそれぞれ異なった属性の音の感覚を引き起こす。つまり、音圧は音の大きさ、周波数は音の高さ、波形は音色、という心理的属性を音の感覚として生じさせるのである。これをまとめると、

 

物理的属性     心理的属性

音圧     →  音の大きさ

周波数    →  音の高さ

波形     →   音色

 

のように表せる。ただ、気をつけなくてはならないのは、この関係は常に11で成り立つとは限らないということだ。例えば、音圧は同じでも、周波数を変えれば、その音の大きさは違って聞こえる(高い音と低い音では感度が異なるため)。また、周波数が2倍になったからといって、音の高さが2倍になったように感じられるとはいえない。

 このようなことをふまえると、音は聴覚器官、つまり耳から入って、そのまま感じられるのではなく、何らかの処理を受けて認識されると考えられる。視覚の場合は、皮質において多種多様な検出器(輪郭、傾き、運動などを検出する)による処理が行われ、様々な視覚パターンで情報が分析され認識されることがわかっている。しかし、聴覚の場合は、どのようなパターンで音を認識するのかについてまだまだ未知な部分が多く、よくわかっていない。これからの詳細な研究が待たれる。

 

文献

今田他 1986 『心理学の基礎』 培風館

重野 純 2003 『音の世界の心理学』 ナカニシヤ出版