8 批判的思考
教育学部2回生 国崎貴弘
Ⅰ 批判的思考とは
批判的思考とは、一般に言われているような、「相手のことを批判する」ための思考ではなく、物事を客観的かつ多面的に捉え、基準に基づいて判断する論理的・反省的思考である。
Ⅱ 批判的思考の構成要素
Ennis(1987)は、批判的思考の構成要素を、認知的側面である能力(ability)やスキルと、態度や情意的側面である傾向性(disposition)に分けた。
能力(ability)やスキル
①
基礎的な明確化
②
推論の基盤の検討
③
推論
④
推論後の明確化
⑤
方略
批判的思考が持つ傾向性(態度)
(a)
明確な主張や理由を求めること
(b)
信頼できる情報源を利用すること
(c)
状況全体を考慮したり、もとの重要な問題から外れないようにしたりすること
(d)
複数の選択肢を探すこと
(e)
開かれた心を持つこと(対話的思考、過程に基づく思考など)
(f)
証拠や理由に立脚した立場を取ること
・・・などがある。
→これらの能力やスキル、傾向性は、我々が批判的思考を行う際にどのように働いているのであろうか?
Ⅲ批判的思考を身につけるとは
批判的思考の教授法
①
学習者の方向づけ(訓練目標の提示、推論方略の概説)
②
指導(モデリング、説明、提示)
③
練習(サポートのある訓練とない訓練)
④
フィードバック(ディスカッションなど)
また、こうしたシステマティックな教授と支援で、批判的思考の能力を高めるだけでなく、傾向性(態度)も変えることができると考えられている。
→このような教授によってどのような能力が高まっていくのであろうか?
→批判的思考を身につけることが単にスキル教授によってなされるとしたら、同じくらい教授を受けた人同士でも、一方は重要な問題点に気づき、他方は気づかなかったりするのはなぜであろうか?単なる一方の微妙な訓練不足の問題であるのだろうか?
文献 楠見 孝 1996 帰納的推論と批判的思考 市川伸一(編) 思考(認知心理学第4巻)(pp37-60) 東京大学出版会