論文の読み方・探し方
TA常深 浩平
○ そもそも論文とは何か?
例えば、
① 議論する文。理義を論じきわめる文。論策を記した文
② 研究の業績や結果を書き記した文
(新村 出編 広辞苑 第5版 岩波書店)
● 論文を読むということ
全世界の研究者が同じようにして論文を探して読んでいる
論文を探して読み始めたら、ある意味ではすでに世界水準の研究者と同じラインに立っている
○ なぜ論文を読まなければならないのか? ―卒論に向けて
自分も「論文」を書くのだということを一度しっかり考えてみる
「論文」を知らなければ、論文は書けない
そこまでではなくとも「論文」を知っておいた方が書きやすい
まずは論文を読んでみる⇒たぶん分からないことだらけ⇒それで良い
誰かに聞いてみるのも良いし、読み重ねれば分かってくることもある
何かピンと来るもの、いいなぁと思えるものがあればじっくり読んでみる
気に入った論文をお手本にするのも良い
とはいえ、程度に差こそあれ論文を1本まるまる読むのはhard dutyである
⇒要約・アブストラクト(abstract)の活用
文頭や文末などについている場合が多い。その論文のエッセンスが短くまとめられている。ここを読んで全体を読むべきかどうか判断するのは割と良く行われている方法
● 注意すべきは
玉石混交 … 特に最初の内はそれが顕著
基本的かつ最終的には、自分の目を通して真価を測ることになる(内的な基準)
ただし、その手掛かりになるかもしれない外的な基準もいくつかある
論文掲載雑誌:いわゆる雑誌のレベル。最も有名な学術論文雑誌はNatureあたりか、Scienceも有名:心理学ではPsychological ReviewやJournal of experimental psychology(JEP)とか心理学研究や教育心理学研究、心理学評論…etc.
著者:既知の著者のものであれば、内容は自ずと推察されてくる部分もある
引用件数:検索エンジンや雑誌によっては、その論文が他の論文で何度引用されたか=引用件数を掲示してくれる場合がある
引用文献数:論文末に添付されている引用文献リストはその論文が過去の他の研究を背景に成立しているかの目安になる場合がある
刊行年:あまりに古いものだと、その後研究が進んでいる可能性がある
しかしながら絶対の基準というものは存在しない
○ では良い論文とは(言うは易し)
内容に嘘偽りが無く、簡潔にして過不足無く、説明や論理、背景が分かり易い
※ 好みも存在する
● 論文の検索方法いろいろ
例えば、
・ 自分の目で調べる
・ 図書館などで専門の棚を上から下まで眺める
+図書館の蔵書検索サービスを使う
+他大学の蔵書(あるいはコピー)を取り寄せる
具体的には、教育学部図書館、文学部図書館、付属図書館、人環図書館などなど
書庫内のものであっても多くの場合手続きを経れば借りられる。躊躇するなかれ
・ 論文の検索エンジンを使う
○ 近年の急速な電子化による利点
・ 雑誌を探す作業、コピーの取り寄せに費やす時間、手間、手違い
⇒ITの進歩によりWeb上に電子ジャーナルが普及
電子ジャーナル:Web上で公開されている論文
(形式は様々、ワード、HTML、PDF等々、時には有料)
論文の検索エンジン:電子ジャーナルの目録のようなもの、キーワードを手掛かりに論文を検索してくれる(googleの論文限定版と思えばよい)何種類もある
文末に資料を記載
● 探し方
入力できるキーワードは検索エンジンごとに異なるので、最初に確認する
ここでは主要なものを紹介
論文のタイトル:タイトルの一部でも可の場合が多い;ただしあまりに広いキーワードだと(例えばpsychologyとかmemoryとか)、たくさんHitし過ぎてエラーになる場合があるので注意;複数のキーワードで検索できる場合は、それを用いて数を限定していく
著者名:同姓同名の研究者がいる場合も多いので注意(心理学のZwaanさんを調べたいのに建築学の論文を書いているZwaanさんもHitしている)
出版年:これだけだと膨大な量がHitするので、著者名など他のキーワードと組み合わせて絞り込みに用いることが多い
掲載雑誌名:多くの場合雑誌名の一部でも可
論文のキーワード:上記に含まれないものでも、論文(雑誌)によっては、関連語をキーワードとして検索可能にしてくれている場合がある
(例)タイトルは『物語理解と記憶の関連』だが、別にキーワードとして「自伝的記憶」が挙げられている場合、「自伝的記憶」というキーワードで『物語理解と記憶の関連』という論文がHitする
いろいろあるが、最初はあまり気にせず、興味のある単語を入力して検索してみれば良い。専門用語に慣れないうちは全然Hitしないということもあるが、表現を変えると急にたくさんHitすることもある。手近にある論文を斜め読みしてみたり、誰かに聞くなどして使いやすいキーワードを見つけると良い
○ Hitした後 (今回は無料の場合のみ想定)
関連の論文が見つかったらどのぐらいの情報が得られたか確かめる
最も良いのは全文がダウンロードできる場合であるが、
アブストラクトや要約+αだけしか見られない場合もある
後者の場合、掲載雑誌の情報は必ずあるはずなので、それを控えて図書館などに収蔵されてないか調べてみる
また、その検索エンジンでは全文ダウンロードが無理でも、Web上に無いと決まったわけではないので、得た情報を活かして他の探し方をするのも手だ(文末にその例)
※ 注意:検索エンジンは使うときに「ログイン」が必要なものがある
その場合、使い終わったら必ず早めに「ログアウト」すること
一度に学内で使える人数が限られている場合、誰かがログインしたままになるとその検索エンジンを使える人数が減っている可能性があるため
以下に、検索エンジンの例を挙げる
◆◇◆ 京都大学付属図書館ウェブページより
◎ 京都大学付属図書館のホームページ
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/homejm.html
○ 蔵書検索:京都大学OPAC:著作や雑誌を検索可能
http://kensaku.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/
※ 他に横断検索OPAC(近畿北部地区の大学全てを検索)なども
―以下は京都大学付属図書館ウェブページ内の学内向サービスのコンテンツ(学内限定)
○ 電子ジャーナル:雑誌名から検索
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/gakunaiej.html
―以下は学内向サービス内のデータベースに登録されているものから一部を抜粋
○ SwetScan (外国語雑誌目次データベース):タイトル・著者名・雑誌名などから検索
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/lusr/swets.html
○ Web of Science:上記に加え、引用回数を検索可能
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/lusr/wos.html
● 京都大学という利点
検索エンジンの一部は有料(時折かなり高額)
大学が契約して払ってくれているから自由に使えるものもある
他大学では必ずしもここほど恵まれていない
自分のいる環境が持つ利点を知り、活用する
◆◇◆ 一般(学内限定の可能性あり)
○ PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi
○ ScienceDirect:ELSEVIER社の運営する論文検索エンジン
◆◇◆ 探す論文が限定されているとき
検索エンジンで全文がないあるいはHitそのものがない、という場合でも直に検索することが可能である
○ Google(学内外問わず)
筆者や研究グループのウェブページをあたるのも良い
著者名をGoogle検索するなど
論文を検索するのも読むのも身体で覚える部分が少なくないというのが実感です
何はともあれ行動を起こしてみるのが一番だと思います