Brown Bag Seminar 6月19日 教育認知心理学講座 M1 平山るみ
Journal of Educational Psychology 1999, Vol. 92, No. 2, 301-311
Constructing Arguments From Multiple Sources: Tasks That Promote Understanding and Not Just Memory for Text
Jennifer Wiley, James F. Voss
・ 理解と記憶は異なる
先行研究
・ 「理解」が記憶と関わっている→テキストが簡単なほど、その記憶は高まる
・ 努力した方が学習効果あり→難しいテキストの方が問題解決や理解の成績上がるが記憶は促進されず
・ 状況のモデルを構築すると概念的に促進→メンタルモデルの構築は生徒の対象へのより深い理解の鍵である
・ knowledge-tellingとknowledge-transforming
テキストから紙への積極的転移⇔新たな結合を作るより活動的で建設的プロセス
テキストベースとの表面的相互作用 ⇔テキスト内容の状況モデルとのより概念的相互作用
実験1
問題
従来の歴史教科書からの学習の研究
・ 議論的課題が物語的課題より、変化、統合、因果的エッセイの生成を促進
・ 特に、教科書からより多数の文献による議論的課題において
・ 物語的…記憶成績は上昇するが、理解、歴史的事象の因果関係や要素の対応付けは促進されず
しかし、これらの研究は独立した尺度ではなかった
目的
・ 議論的課題が、統合的因果モデルの構築を促進するだけでなく、推論やアナロジー課題によって示唆される概念的理解をも促進することを証明する
・ どのようなwriting課題が特に概念学習を促進するのか
方法
被験者:ピッツバーグ大学の心理学概論受講者より64名(女性41名、男性23名)
母国語は英語
材料 :1800年から1850年までのアイルランドについての情報
被験者の半分はweb環境において、8つの別々のドキュメント
残りの半分は1つの教科書の章
・文章検証課題、推論検証課題(各10項目)
・主題同一視(アナロジー)課題(類似性を10段階評定)
Potato Famineに表面的、又は深い類似性があるか考える
the Stock Market Crash, the Black Plague, recent Tuberculosis outbreaks,
the institution of Poll Taxes in the South after the Civil War
手続き:・1800から1850年のアイルランドの情報を与える
・何が1846から1850年の人口の重要な変化を引き起こしたかについて書く
(物語文, 要約文,説明文,議論文)
・文章を読み、writing課題を行う(30分間)
・情報提示とwriting課題の2要因(2×4)
・writing課題の後、文章検証課題、推論検証課題、主題同一視課題、人口統計調査
一般的歴史知識のテスト(歴史的知識に有意差なし)
結果
1.文章の分析
文章量:平均12.4個 有意差なし
エッセイ中の文章:(Figure 1.)
・変化した文章
提示条件の主効果……web>テキスト
writing教示の主効果…議論>物語,要約
・文章の引用
提示条件の主効果……テキスト>web
writing教示の主効果…物語,要約>議論
交互作用に傾向あり…テキスト条件での物語,要約
・付加された文章
有意差なし
・結合 (Figure 2)
提示条件の主効果……web>テキスト
writing教示の主効果…議論>物語
因果的結合
提示条件の主効果……web>テキスト
writing教示の主効果…議論>物語
writing分析の要約
・議論文と物語文、提示条件で有意差あり
・要約文は物語文に似ている
因果モデルの構築やテキスト内容の変化は促進しない
概念的統合又はテキスト内容の再分析よりも、単に情報を報告することを促進
・説明文は物語文や要約文よりも変化を促進
・webによる提示と議論文条件では効果が似ている
webによる提示条件においては議論文条件であるとき、変化,結合,因果的結合が最も多く、引用は最も少ない
2.学習の測定
・ 文章検証課題 (Figure 3)
提示条件で主効果……テキスト>web
writing条件では有意傾向…説明が他より成績低い
テキスト条件では説明文や議論文よりも物語文や要約
の方がより良い再認
・推論検証課題
提示条件で主効果……web>テキスト
writing条件では有意傾向…議論文が他より成績高い
web条件においては議論文が他より成績高い
・主題同一視課題 (Figure 4)
Poll Tax scenario……web条件において傾向あり
議論>物語,要約,説明
討論
・ 主題のより深い理解を得るためには、knowledge-tellingではなくknowledge-transformingを必要とする
・ 議論は各自の意見を支持する証拠の産出、より広い範囲での統合的因果モデルの構築を促進
実験2
目的
単一情報源において、議論文と物語文の利点
情報とエッセイの構造の違いによるのかどうか
方法
被験者:大学生24名 (女性15名、男性9名)
1回生12名、2回生6名、3回生4名、4回生2名
母国語は英語
材料:1800年から1850年のアイルランドについての新聞記事(実験1でのものと同一)
半数は紙面、半数はweb-site
手続き:1800年から1850年のアイルランドについての新聞記事(紙面又はweb)で読ませる
文章を読み、writing課題を行う(30分間)
情報提示(紙面,web)とwriting課題(物語文,議論文)の2要因(2×2)
writing課題の後、文章検証課題、推論検証課題、主題同一視課題、口統計調査、一般的歴史的知識検査(歴史的知識に有意差なし)
結果
1.文章の分析:
文章量:平均11.1 有意差なし
エッセイ中の文章:(Figure 5)
・変化した文章
writing条件で主効果…議論>物語
・文章の引用
writing条件で主効果…物語>議論
・ 付加された文章
writing条件で主効果…物語>議論
交互作用あり…web条件で物語>議論
・結合 (Figure 6)
writing条件で主効果…議論>物語
提示条件で有意傾向…紙面>web
・因果的結合
writing条件で主効果…議論>物語
writing分析の要約
単一の新聞記事からでも
文章の変化,因果的結合…議論>物語
文章の引用……………物語>議論
2.学習尺度
・文章検証課題 (Figure 7)
交互作用に有意傾向…紙面提示における物語条件
・ 推論検証課題
writing条件で主効果…議論>物語
・ 主題同一視課題(Figure 8)
Poll Taxにおいてwriting条件で主効果…議論>物語
討論
・議論文条件が、より構築的活動を促進する
・変化的エッセイの産出者は歴史的事象の因果関係を深く理解
・表面的な記憶は物語文条件でより成績高い
総合討論
・ 議論文条件の方がより理解を促進。特に複数の情報源である場合に有益
→複数の情報源の結合や議論文条件では、学習内容の構築的活動を促進する
→議論はより個人的解釈である
意見を支持する必要があるため、最も重要で関係する情報を補う
・ 物語文条件や単一のテキストからの方が記憶成績は良い
→必ずしも深い理解が必要ではない
・ 記憶と理解とは同じ文脈ではない
→選択式テストや語句再生の問題が深い思考を必要としていないことに気付かねばならない