2002/10/01(Tue)  BBセミナー 文献発表               M2 杉森絵里子

Cross-Modal Source Monitoring Confusions Between Perceived and Imagined Events

L. A. Henkel , M. K. Johnson , & N. Franklin

Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, & Cognition 2000, Vol. 26, No. 2, 321-335

 

要約

イメージ生成記憶は,その記憶に関連する視知覚情報が記銘される時,もっとも虚記憶を導きやすい

というソースモニタリングの枠組みをもとにした仮定について2つの実験を使って検証した.“見た”

ところを想像し,かつ実際に“聞いた”時は,ただ実際に“聞いた”だけだったり“見た”ところを

想像するだけの時だったり,もしくは“聞いた”り“見た”ところを想像した時よりも,実際に“見

た”と判断しがちであった.さらに,被験者がソース判断をしようと試みたり,じっくり記憶の質に

ついて評価しようとした時にはソースのエラーが減った.平均して,学習した項目と虚記憶は質が異

なる.まとめると,記憶する時に多くの異なる質がソース帰属にかかわるにつれ,関連する視知覚の

情報からの質は,イメージ生成の記憶よりも間違って“想像した記憶を見た”と判断するようなバイ

アスを働かせることになってしまうことが明らかになった

 

 

視知覚の情報からの記憶とイメージ生成による記憶について

     記憶痕跡における質の違い

←視知覚情報の記憶・・・視覚的鮮明さ

 イメージ生成の記憶・・・認知操作情報

しかし,この2つが完全に分離できるわけではない(見ながら思ったりイメージしながら見たり).

 

     2つのソース間での誤帰属が見られる場合

2つの質の間で共通したものを持っている時

典型的なものをイメージする時,ありありと鮮明にイメージできる.

  イメージしやすいものイメージする機会の多いものを知覚する時,イメージに照らし合わせながら知覚する

 

2つのソースで学習した記憶が形態的に類似していたりカテゴリが同じ場合

  例えばシャツをイメージし,ジャケットを見た時.

 

←モダリティが同じ場合

  視覚情報を使用する場合,聴覚情報を使用する場合,といったように分けたほうが視覚で見て,聴覚をイメージしてという場合よりエラーが起こりやすい.

 

本研究では

2つのソースのモダリティが共通していない時にも誤帰属が多く起こる時があることことを示す.

 

 

実験1

方法

 被験者

  57(うち5名は除外)

 

 材料 (Appendix A, Table 1)

a.      視覚() 聴覚(), b. 視覚(), c. 聴覚(), d. 視覚() 視覚(), 

e.       視覚() 聴覚(), f. 聴覚(), g.  視覚(), h.  視覚(Filler)

126項目を6項目×14ブロック と7項目×6ブロックにわけた.

各ブロック内の呈示ソースは等しくなるようにした.

1つの項目について2つ以上のソースで提示される場合その間に少なくとも20項目はさんだ.

 視覚()6項目×4ブロック,  7項目×3ブロック

 視覚() 6項目×4ブロック,  7項目×3ブロック

 聴覚()6項目×3ブロック

 聴覚() 6項目×3ブロック

 

 手続き

  学習時

   4s(文章)→ 6s(音 or 映像 or ブランク)→ 3s(回答)

  テスト時 2日後

   視覚(),つまりa, b, d, e,から9項目ずつ, 

視覚(),つまりgから9項目, eから27項目

   どちらでもない,つまりc,f,から9項目ずつ, new項目から18項目

   計108項目について“見た”か“見たところを想像した”か“どちらでもない”から3択.

 

結果と考察

  ソースエラーについて

Figure 1から・・・a 視覚() 聴覚()が1番“見た”とエラーする比率が大きい.

 

Table 2左から・・・b + c – new(.20)a(.25)

             bfnew(.12)e(.10)

               bbnew(.15)d(.08)

 

他のソースエラーについて

 Table 2の左と中央から・・・視覚()を“見た”と誤帰属する率(.13)のほうが,視覚()を“見たところを想像した”と誤帰属する率より高い(.04)

“新しい”への誤帰属について

 視覚()のほうが視覚()より“新しい”と答えている率が高い.

  

 

実験2

実験1で得られた結果をさらに詳しく調べる.

・ソース判断の選択肢を増やす.

←テストの形式によってソース判断率は変化する

←詳しく記憶の質について評価させればさせるほどソースエラーは減る.

MCQを使用する.

←正しい記憶と虚記憶の記憶の質について検討.

方法

 被験者

  127(うち6名は除外)

 

 材料 (Appendix B, Table 1)

b.      視覚() 聴覚(), b. 視覚(), c. 聴覚(), d. 視覚() 視覚(), 

f.        視覚() 聴覚(), f. 聴覚(), g.  視覚(), h.  視覚(Filler), i.  視覚(), 視覚(),

j.  視覚(), 視覚(),  k.  視覚(), 聴覚(),   l.  聴覚(), 聴覚(), 

m. 視覚(), 聴覚(),  

 

実験1との違い・・・hが36項目だったのがhの数を12に減らしその分i,j,k,l,mを増やした.

        ←よりカウンタバランスがきれいになった.

102項目,156試行を6項目×26ブロックにわけた.

各ブロック内の呈示ソースは等しくなるようにした.

1つの項目について2つ以上のソースで提示される場合その間に少なくとも20項目はさんだ.

 

 手続き

  学習時

   3s(文章)→ 6s(音 or 映像 or ブランク)→ 3s(回答)

←文章の呈示時間が変化.

  テスト時 2日後

   旧項目である102項目に新項目50項目を加えた.

   3つの条件のテスト方法にわりあてた.

   1つ目・・・“実際に見た”か“見ていない”かをyes / no 判断.

   2つ目・・・“実際に見た”か“見たと想像した”か“実際に聞いた”か“聞いたと想像した”か“新しい”から複数回答OK

   3つ目・・・yes / no 判断でyes と答えた後,確信度(3件法)について答え,その後記憶の質について5件法で答えた(鮮明さ,記憶した時の自分の気持ち,視覚的な明確さ,など)

 

結果と考察

 ソースエラーについて

Figure 2から・・・実験1と同様,a 視覚() 聴覚()が1番“見た”とエラーする比率が大きい.

Table 3右から・・・実験1と同様,2つのソースで同じ項目を学習した時,a 視覚() 聴覚()のみが視覚(),聴覚()1つのソースで学習した際のエラー率の和を上回った.

つまり,2つのソースが互いに影響を及ぼしあって“実際に見た”と誤帰属するバイアスがかかるようになっている.

 

MCQについて

 Figure 3 から・・・全体的に見ると,正答のほうが語答よりもMCQが高い.

 

Table 2の中央とFigure 2 から・・・“見たと想像した”も“実際に見た”も,“聞いた”に比べてMCQは高いが,そのことと成績は結びついてない.

つまり,視覚情報は聴覚情報よりも被験者にとってははっきりした記憶のつもりだが,被験者に

とってはっきりした記憶だからといって成績がよいわけではない.

   

 

総合考察

まとめ

ある出来事について,実際に聞き,かつ,見ていることを想像した場合,実際に見た,と誤帰属する率がもっとも高かった.

 

2つの考え

1. 記銘時の問題

・実際に聞いた時に無意識的に視覚イメージが頭に思い浮かぶ率が,実際に見た時に無意識的に聴覚イメージが頭に思い浮かぶ率よりも高い.

・自然にイメージした場合,故意にイメージした場合よりも,実際に“見た”と帰属する率は高い.

 

2.       検索時の問題

・記憶痕跡を評価する際,見たか聞いたかで評価するより,知覚したかどうかで大きく評価するのではないか.

←実際に見た実際に聞いた条件のほうが,実際に見た聞いたと想像した条件より,見たへの誤帰属が多いことから.