Test Formats Change Source-Monitoring Decision Process
(テストの形式によって変化するソースモニタリングの決定プロセス)
Richard L. Marsh & Jason L. Hicks
Journal of Experimental
Psychology: Learning, Memory, & Cognition 1998, Vol.24, No.5, 1137-1151
4つの実験ではどのようにソースモニタリングの決定がなされるのかについて検討した,実験1.2ではソース判断の際,従来のテスト方法ではなく学習した項目について“見たかどうか”のように特定のソースについてそのソースで学習したかどうかについてたずねた.その結果,テスト時で使われたソースによって結果が異なった.それらの結果はまた,学習時に使用されたソースの組み合わせと関係もあった.実験3.4では,ソース判断の際,2つのソースから正しいと思うほうを選べという形で判断が行われた.この形式でも,実験1.2と同じパターンが見られた.特定のソースについてたずねることが,どの程度ソース判断時に診断する特定の質について焦点を当てることができるのかということが考察された.
ソースモニタリングの方法
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ヒューリスティック
対象となる記憶痕跡の質が明らかなとき(視知覚情報が鮮明←外的ソース)
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システマテック
対象となる記憶痕跡の質があまり残っていないとき(スキーマや事前知識を頼りに)
ソースモニタリング研究における2つの柱
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ソース判断の際使用される記憶痕跡の質についての検討.
・
ソース決定する際のプロセスについて検討.← 今回はこっち
決定プロセスの操作
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Dodson & Johnson (1993)
学習時 絵を見る 文章を読む 絵を見ながら文章を読む
テスト時 “見た” “読んだ” “両方” “新しい”← ○
“見た” “読んだ”
・
Lindsay & Johnson (1989) 目撃証言のパラダイム
学習時 ある場面を見る その後事後情報を与えられる.
テスト時 新旧再認判断
ソース判断← ○
・
Multhaup (1995) false-fameパラダイム
学習時 なじみのない顔を見る
テスト時 有名な顔,未学習の顔,学習したなじみのない顔について
有名な顔を選ぶ
3択で答えさせる← ○
・
Marsh & Bower (1993)
学習時 ある事柄について(ex 自動車事故を減らす方法)意見を書く
テスト時 1週間後に前回書かなかった意見を新たに書く.
学習時に書いたことに新たな文を加え,ソース判断.← ○
概観と理論的根拠
2種類のソースで学習した後,テストでは特定のソースについてYes/No判断.
・
テスト時にたずねられたソースによって正答率に違いが見られるのでは
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一般的なテストの成績と違いが見られるのでは
←テスト時にたずねられたソースを重点的に診断すると考えられる.
・
“生成したかどうか”についてたずねたほうが“見たかどうか”についてたずねるよりも成績がいいのでは
←認知操作情報は知覚情報より早く検索 (Johnson,
Kounios, & Reeder, 1994)
←認知操作情報は知覚情報より多く残る (Johnson,
Hashtroudi, & Lindsay, 1993)
実験1
方法
被験者 72名(うち33名が従来のソーステスト,29名が特別なソーステスト)
材料 120単語(Kucera &
Francis, 1967) “見る”“生成”“未学習” 40ずつ
また,実験条件のためにさらに20単語ずつにわけテスト時の“見たかどうか”“生成したかどうか”のテスト形式に割り当て.
手続き 学習時 見る条件…注視点(250ms)→単語提示(3s)
生成条件…注視点(250ms)→アナグラム単語提示(3s)
テスト時 学習が終わってすぐ.未学習項目40単語を加えた.
実験条件…それぞれのソースで学習した単語のうち半分を“見ましたか”とたずね,残り半分を“生成しましたか”とたずねた.
統制条件…120単語について“見た”“生成”“未学習”の中から3択.
結果と考察(図1と表1)
図1から
生成条件 “生成したかどうか”(yesと答える)>“見たかどうか”(noと答える)
見る条件 “生成したかどうか”(noと答える)>“見たかどうか”(yesと答える)
未学習 “生成したかどうか”(noと答える)>“見たかどうか”(noと答える)
表1から
統制条件 未学習項目≒生成項目>見る項目
未学習項目は“見る”に誤帰属,見る項目は“未学習”に誤帰属,生成項目は“見る”に誤帰属.
実験条件と統制条件との比較 実験条件のほうがyes判断が多い.
実験1でわかったこと
・
テストの形式によって回答が異なった.
←テスト形式によって判断の際使われる質が異なる.
・
“生成したかどうか”条件のほうが“見たかどうか”条件より成績がよかった.
←認知操作情報のほうが視覚情報よりも判断力がある.
・
統制条件より実験条件のほうが正反応率も誤反応率も高い.
←Yes反応が高い.
実験2
方法
被験者 65名(うち30名が統制条件,35名が実験条件)
材料 実験1と同じ “見る”“聞く”“未学習” 40ずつ
また,さらに20単語ずつにわけテスト時の“見たかどうか”“聞いたかどうか”のテスト形式に割り当て.
手続き 学習時 見る条件…注視点(250ms)→単語提示(3s)
聞く条件…注視点(250ms)→実験者が単語を読み上げる(3s)
テスト時 “生成”が“聞く”になる以外実験1と同じ.
結果と考察(図2と表2)
図2から
学習ソースとテスト形式との間で交互作用.
聞く条件 “聞いたかどうか”(yes)と“見たかどうか”(no)の有意差なし.
見る条件 “聞いたかどうか”(no)と“見たかどうか”(yes)の有意差なし.
未学習 “見たかどうか”(noと答える)>“聞いたかどうか”(noと答える)
表2から
統制条件 未学習項目>聞く項目≒見る項目
すべての条件において誤帰属率の差はなし.
実験条件と統制条件との比較 実験条件のほうがyes判断が多い(見る条件における“見た”反応と聞く条件における“見た”反応には有意傾向のみ).
実験2でわかったこと
・
聞く条件,見る条件ともにテスト形式によって回答率に有意差はなかった.
←どちらも同じくらいの判断力
・
新しい条件では“見たかどうか”の方が“聞いたかどうか”よりも正答率が高かった
・
学習ソースとテスト形式との間で交互作用
←“見たかどうか”でno反応が大きい.テスト時に視覚で提示されるからでは?
・ 統制条件より実験条件のほうが正反応率も誤反応率も高い
←Yes反応が高い
実験3.4
実験1.2でYesへの反応バイアスが見られたことについて.
新旧再認テストでも見られる.←2者択一の強制選択というテスト形式にしたら減らせた.
実験3.4では2つの単語を提示して“どちらを見ましたか”“どちらを生成しましたか”(実験3),もしくは“どちらを見ましたか”“どちらを聞きましたか”(実験4)とたずねる形式をとる.
相対的な質判断をすることになる.
未学習項目にも同じテスト形式で強制選択させることによって,yes反応以外の反応バイアスを知ることができる.
方法
被験者 81名(うち41名実験3,40名実験4)
材料 実験1.2と同じ .
手続き 学習時 実験3.4ともに実験1.2と同じ.
テスト時 上の表にあるとおり
テストの際当てはまらないものがあることは言わない.
結果と考察(図3と図4)
見る生成条件 “どちらが生成”>“どちらが見た”
見る聞く条件 “どちらが聞いた”≒“どちらが見た”
図3の生成未学習条件と見る未学習条件について
生成未学習条件 “どちらが生成か”については天井の成績.
“どちらが見たか”については生成項目を選べば正答.約40%
見る未学習条件 “どちらが見たか”については約60%.
“どちらが生成か”については見る項目を選べば正答.約60%
図4の聞く未学習条件と見る未学習条件について
聞く未学習条件 “どちらが聞いたか”については約80%.
“どちらが見たか”について聞く項目を選べば正答.約45%
見る未学習条件 “どちらが見たか”については約80%.
“どちらが聞いたか”について見る項目を選べば正答.約50%.
・
実験1.2と同様,テストの形式によって診断される記憶痕跡の質が異なった.
・
生成は見るよりも診断しやすい.
・
見ると聞くでは診断しやすさ同程度.
・
生成未学習条件の場合,生成項目でなく未学習項目を見たと判断する傾向が見られたが,見る未学習条件では,未学習項目でなく見る項目を生成したと判断する傾向.
←生成未学習条件において“見たかどうか”を聞かれるとき,生成項目の記憶痕跡にある視覚情報は認知操作情報より弱い.
←見る未学習条件において“生成したかどうか”を聞かれるとき,未学習項目よりも見る項目の痕跡にある認知操作情報の方が強い.
総合考察
わかったこと
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テストの形式で回答が変わる.
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認知操作情報について焦点を当てた場合の方が視知覚情報について焦点を当てる場合より,診断力がある.
・
見る,聞くの外的ソースについての診断力は同程度.
さらに図1と図2,図3と図4をそれぞれ比べてみる.
・ どの実験にも見る項目は含まれているが対になっている項目が聞くか生成かでその回答率は異なる.
←新旧再認判断の,ディストラクタ課題によって成績が変わるのと似ているかも.