Proactive Inference, Accessibility Bias, and Process
Dissociations:
Valid Subjective Reports of Memory
Larry L. Jacoby, Janine F. Hay, & James A. Debner
Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, & Cognition 2001, vol.27, No.3, 686-700
要約
Habit(利用可能バイアス)とRecollection(識別可能)を分離する方法である過程分離手続きを使って順向干渉について調べた.3つの手がかり再生実験によって,順向干渉が実際の記憶ではなくむしろバイアスの影響からくるものだということが示された.注意の分散,老化,学習時間が選択的に想起パラメータに影響を及ぼした.それに対し,練習確率が習慣パラメータに影響を及ぼした.さらに,実験2,3では主観的な想起報告が過程分離手続きによって得られた主観的な想起見込みと高い相関を示し,またよく類似していた.著者は得られた結果と順向干渉の理論について論じ,高齢者が干渉効果の影響を受けやすいのは時々影響力の勝る反応を抑制できないからではなく想起できないからであるということを主張した.
問題
順向干渉とは・・・記憶すべき項目が,以前に貯蔵されたことのある似通った項目のために思い出しにくくなること.
例:以前に駐車した場所のせいで今日どこに駐車したのかが分からなくなる.
対連合学習・・・順向干渉について調べるための標準手続き.
実験条件 A-B呈示 → A-D呈示 その後A-Dについての記憶テスト.
コントロール条件 A-D呈示 その後A-Dについての記憶テスト.
コントロール条件の成績>実験条件の成績 この差が順向干渉.
あ
健忘症患者について・・・干渉の影響を受けやすい.
単語を学習した後,テスト時に学習した単語のフラグメントを呈示すると健常者と同じくらいの正答率.→フラグメントが他の干渉を受けることを防いだ.
過程分離手続き・・・健在記憶と潜在記憶を分離するための手法.
対連合学習が干渉条件とコントロール条件を比べているのに対し,過程分離手続きは干渉条件と促進条件を比較させている.
学習時間や回答時間の制限 健在記憶→影響○ 潜在記憶→影響×
事前学習 健在記憶→影響× 潜在記憶→影響○
本研究の目的・・・過程分離手続きと対連合学習の違いについて.
実験1
過程分離手続きの手法(図1)
Training 75% ale-beerは15回呈示.
25% ale-brewは5回呈示.
50% bed-sheet,bed-sleepともに10回呈示.
Study Congruent Training 75%(ale-beer)の方を学習.
→HabitとRecollectionが一致している.テストでbeerと答えたら正答.
Incongruent Training25%(ale-brew)の方を学習.
→HabitとRecollectionが対極にある.テストでbeerと答えたらFR.
Congruent群の正答・・・RecollectionとRecollectionできなかった時のHabit.
Incongruent群の正答・・・Recollectionできなかった時のHabit.
→P(correct recall| congruent)=R + (1- R)H
P (false recall| incongruent)=(1- R) H
R =P(correct recall| congruent)- P(false recall| incongruent)
H= P (false recall| incongruent)/ (1- R)
Guessing群・・・純粋なHabit.
この他に注意分散の影響も調べる.
→注意分散ではRecollectionが減ってHabitは変化なしという先行研究.
方法
被験者 32名
材料とデザイン
Jacoby(1996)から2組のペア(e.g., knee/bend, knee/bone)ができる18の刺激.
そのうち75%-25%が9刺激.50%-50%が9刺激.
75%-25%条件では,1組(knee/bend)は15回呈示,もう1組(knee/bone)は5回呈示.50%-50%条件では,1組(knee/bend)は10回呈示,もう1組(knee/bone)は10回呈示.
手続き
Training
・72×5ブロックの学習.
・1ブロックにつき18の刺激は4回呈示された.
・3回以上同じペア(knee/bend)が呈示されることはない.
・2秒間 knee/b‐n-が呈示された.
・その間に予測された答えを声に出した.
・500msのインターバルの後,1秒間答えknee/bendが呈示された.
・被験者は各刺激につき2つの答え(ペア)があること,どのうち1つはもう片方より答えとなる場合が多いことを教示された.
Study
・18の刺激のうち,9つは集中条件,9つは分散条件.
・500msのインターバルと1秒間の呈示.
・3knee/bend5 のように数字を左右に呈示.
・集中条件・・・ペアを見て覚えようとする.
・分散条件・・・左と右の数字の和を計算する.
Test
・knee/b‐n-のように1つずつ全18刺激が呈示された.
・500msのインターバルの後,1つのテストにつき3秒間.
・被験者はStudyで呈示されていた単語を答えるよう答えられない場合は推測すること,Studyでは呈示されていない単語もテストの中にあることが教示された.
結果
表1 集中条件,Congruent条件における正答率(.72 .83).
集中条件,Incongruent条件におけるFR(FA)(.32 .40).
表2 表1からR,Hを算出.GuessとHを比べる.
Rについて分散分析.
・ 集中条件と注意分散条件で有意差.
・ Trainingにおける差は有意でなかった.
Hについて分散分析.
・ Trainingにおいて,75%-25%条件と50%-50%条件で有意差.
・ 集中条件と注意分散条件で有意差なし.
HとGuessingについて分散分析.
・ HとGuessingで有意差なし.
デザインの比較: バイアスとしての順向干渉
対連合学習における実験条件→Incongruent 75%-25%条件
対連合学習におけるコントロール条件→Incongruent 50%-50%条件
・ 75%-25%条件のほうが50%-50%条件よりもFRが多かった.
→順向干渉を示す.
・ 75%-25%条件のほうが50%-50%条件よりも集中と注意分散の差が多かった.
実験2
1.加齢と関係する記憶について.
→加齢とともにRecollectionは変化するがHabitは変化しない(Jacoby et al., 1996).
2.客観的なRecollectionと被験者の主観的な報告を比較.
実験1と異なる点
・テスト時に1つ1つの刺激に関して本当にRecollectなのかを被験者に尋ねる.
・被験者の報告と過程分離手続きにおいて算出されたRとを比較.
Remember/Know手続きと過程分離手続き
Remember/Knowとは・・・新旧判断の際,学習で呈示されたことについての詳細な記憶
がある場合(Remember)と詳細な記憶はないがFamiliarityがある場合(Know)に分離.
Remember/Know手続きとの違い・・・Rememberのみについて答えてもらう.Knowについては答えない.
主観的なRememberと客観的なRememberを区別できる.
方法
被験者 大学生16人と60歳以上(平均72歳)16人.
方法 実験1と異なる点
Trainingにおいて15回呈示と5回ではなく6回呈示と3回呈示.
注意分散条件がない.
テスト時においてRecollectも答える.
結果
表2から
・ Rでは高齢者と若者の違いがみられ,Hでは高齢者と若者の違いが見られなかった.
主観的な報告について
・ 客観的Rと主観的Rで有意差なし.
実験3
方法
被験者 24名
材料と手続き
実験2との相違点・・・テスト時に”remember” “know” “guess” をいれる.
学習時における学習時間を延ばす.
結果と考察
学習時間を長くしたことでRが増加した.
Hやguessは変化なかった.
主観的な報告について
・ ”remember”ではCongruentとIncongruentの間で有意差が見られたが(.63 vs. .59),“know”では有意差が見られなかった(.15 vs. .15).
総合考察
本研究で明らかになったこと
・ 過程分離手続きではRとHを分けることができる.
・ 注意分散と集中ではRに違いが見られる.
・ 加齢とともに影響するのもR.
・ 学習時間が影響するのもR.
・ 事前の学習回数が影響するのはH.
今後の課題
・ 主観的な報告の確からしさ.
・ ”remember” と“know”について質的な違い.
・ Two-High-Threshold Modelやストループ課題,記憶痕跡などの領域と結びつけること.