Heuristics and Biases: The Psychology of Intuitive Judgment

T. Gilovich, D. Griffin, & D. Kahneman (Eds.)

2002, Cambridge Univ. Press.

 

< 本の構成 >

Introduction

Part 1. Theoretical and Empirical Extensions

A. Representativeness and Availability

B. Anchoring, Contamination, and Compatibility

C. Forecasting, Confidence, and Calibration

D. Optimism

E. Norms and Counterfactuals

Part 2. New Theoretical Directions

A. Two System of Reasoning

B. Support Theory

C. Alternative Perspectives on Heuristics

Part 3. Real-world Applications

A. Everyday Judgment and Behavior

B. Expert Judgment

 

本の中で一貫して読み取れる考え方 (発表者の主観が入っているかもしれないが・・・)

「ヒューリスティック(とそれに伴うバイアス)はおおまかに2タイプに特徴付けることができる(すなわち自動的-熟慮的)。この分類は排他的なものではない。この特徴づけはtwo system modelのそれと対応する。」

T & Kは当初(e.g. 1983)、ヒューリスティックをnatural assessmentと捉えていたが、これまではcognitive miserの視点から捉える見方が広まっていた。しかしtwo systemの考えが広まれば、natural assessmentとしての見方が再評価されるだろう。 これがこの本の目的の一つ。

 

 

 


Ch.27

Remarks on Support Theory: Recent Advances and Future Directions

L. A. Brenner, D. J. Koehler, and Y. Rottenstreich

 

章の構成

SUPPORT THEORY

RECENT ADVANCES

FUTURE DIRECTIONS

CONCLUSION

 

 

SUPPORT THEORY

 

サポート理論とは?

人の主観的確率判断に関する理論

主な特徴

     確率とは、事象[event]に割り当てられるものではなく、仮説[hypothesis]に割り当てられるものとして捉える。

     仮説と確率との間は直接的な1対1対応ではなく、サポート(仮説への支持度)という構成概念が媒介する。

     焦点仮説についての確率は、焦点仮説へのサポートと、競合する対立仮説へのサポートの「比」として表現される。

 

この章で強調されている特徴

サポート理論はその枠組みの中に様々なヒューリスティックを取り入れることができる統合的理論である。

 

サポート理論の鍵となる3つの側面

1.      記述依存性

主観確率は事象の記述され方に影響を受ける。

例) 「あなたの家が自然災害で被害を受ける」

「あなたの家が台風、洪水、落雷、地震、噴火、その他の自然災害で被害を受ける」

2.      証拠のバランス評価としての確率判断

ある仮説Aに対するサポートs(A)は、その仮説への証拠の強度として解釈される。

P(A, B) = s(A) / s(A) + s(B)

確率は、焦点仮説と対立仮説それぞれのサポートの比、すなわち証拠のバランスの評価を反映する。

3.      サポートという構成概念の性質

s(A) s(A1A2) s(A1) + s(A2)

暗示的劣加法性[implicit subadditivity] ・・・ 左側の不等式

明示的劣加法性[explicit subadditivity] ・・・ 右側の不等式

 

RECENT ADVANCES

 

これまでのサポート理論に関する研究はおおまかに以下の4トピックのどれか。

A)     サポートの直接的査定

B)     サポート理論の公理の検証

C)     サポートの劣加法性の決定要因

D)    意思決定と確率補正[calibration]研究へのサポート理論の拡張

 

A)   サポートの直接的査定

サポート理論では、サポートは単一の仮説の関数とされている。

仮説へのサポートの直接的な評定が可能なはず(対立仮説のことや偶然性などを考慮にいれることなく)。

指標として用いられたもの

学問分野間の関連性(Koehler, Brenner, & Tversky, 1997, exp.1

容疑者の疑わしさ(Koehler et al., 1997, exp.5

典型的患者との類似性(Koehler, 2000, exp.5

チームの強さ評定(Fox, 1999; Fox & Tversky, 1998, Study 1; Koehler, 1996 など)

これらからの示唆

     主観確率は焦点仮説と対立仮説の別々の評定に分解できる。

     確率判断の研究は証拠の評価の研究から示唆を得ることができる。

 

B) 公理の検証: 焦点依存と文脈独立

サポート理論における立場独立性の仮定:「焦点か対立かという仮説の立場はサポートに影響を与えない」

相補性[binary complementarity]を含意: P(A, B) + P(B, A) = 1

これに違反する例 Macchi, Osherson, & Krantz(1999)Brenner & Rottenstreich(1999)

しかし多くの研究では相補性は保持されている。

非対称サポート理論へ一般化(Brenner & Rottenstreich, 2000

 

product rule  ・・・ 非対称サポート理論でも維持されている

Q(A, B) = P(A, B) / [ 1 – P(A, B) ]   仮説ABに対するオッズ

Q(A, B)Q(C, D) = Q(A, D)Q(C, B)

仮説へのサポートはペアにされた仮説に依存しない

 

C) サポートの劣加法性の決定要因

unpackされた仮説の構成要素の数(Tversky & Koehler, 1994

・確率が個別の事例の傾向性として解釈されるか、事例の集合における相対的頻度として解釈されるか(Tversky & Koehler, 1994

・仮説の構成要素同士の類似性(Rottenstreich & Tversky, 1997

・仮説と証拠の類似性(Rottenstreich, Brenner, & Sood, 1999

・(残余仮説について)焦点仮説へのサポートの大きさ(Koehler et al., 1997

・証拠となる手がかりのコンフリクト(Koehler, 2000

これらはすべて次の2つのどちらかに影響を与えていると考えられる。

1) 仮説が自発的にその構成要素へ分解されることの容易さ

2) 強力な証拠が仮説の構成要素を支持しているように見える程度

 

D) サポート理論の拡張

a) 主観確率の正確性もしくは補正の予測

変動サポートモデル(Brenner, 1995 ・・・ 信号検出理論の枠組みを利用

b) 不確実状況下の選択に関する理論への組み込み

2段階信念ベースモデル(Fox & Tversky, 1998; Wu & Gonzalez, 1999)

・・・ プロスペクト理論の確率判断の部分にサポート理論を適用する

 

 

 

FUTURE DIRECTIONS

 

「記述依存性」は行動科学でよく言われていること。

例) ピアジェの保存課題の失敗、フレーミング効果、etc..

その鍵となる本質は、

「人は典型的に、問題を標準的規範的な表現形式へ能動的に変形して扱うのではなく、与えられたままに問題を受け取り、扱う」 ということ

 

サポート理論では 「仮説をその要素へ分解することは、構成要素の仮説が個々に評価されるので、より大きな確率判断を生み出す」 :開封の原理

記述依存性のパターンの一つに過ぎない。

     詳細さのレベル以外の仮説の特徴がサポートに影響することもある

     これまでの研究では、外延の共通する仮説に焦点が当たっていた

     証拠も、仮説と同じく、記述依存性に従っている

この議論から、2つのリサーチクエスチョン

a) 仮説のどんな特徴がどのようにサポートに影響するのか?

b) 証拠のどんな特徴がどのようにサポートに影響するのか?

考えられる可能性としては・・・

a) 仮説の特徴

Ø         荷重[valence]

Ø         自己関連性

仮説を信じることの望ましさがサポートに影響するのでは?

b) 証拠の特徴

Ø         あいまい性やコンフリクト

Ø         量や完全性

 

ASSESSING THE BALANCE OF EVIDENCE SUPPORT THEORY AND THE “ABOVE-AVERAGE EFFECT”

 

例として 人並み以上効果を取り上げ、これをサポート理論の見地で説明し、起こりうる現象を予測。

 

CONCLUSION

 

これまでのサポート理論研究はunpackingと劣加法性の研究が多かった。

もっと他にもこの理論についてやることがたくさんある。

他のRECENT ADVANCESで取り上げられているようなタイプの研究もかなり進歩した。

FUTURE DIRECTIONSにあるように、記述依存性という一般的現象は、サポートに影響をあたえる仮説と証拠の特徴を同定する、という研究法略を示唆している。

 

・サポート理論は、多くの経験的パターンだけでなく、そのパターンを生成する心理的過程をも取り込んだ理論である。

・「記述依存性」と「証拠の強度のバランスによる判断」という2つの原理は、他の分野にも幅広く適用可能なものである。