2000年5月8日 Brown Bag Seminar 平山るみ
The Use and Effectiveness of Analogical Instruction in Diverse Secondary Content Classrooms
Janis A.Bulgren,Donald
D.Deshler,Jean B.Schumaker,and B.Keith Lenz
Journal of Educational Psychology 2000,Vol.92,No.3,426-441
今日の中等教育
・ 多量で複雑な情報が増加
・ 様々な能力の生徒が集まっている
従来の研究
・ 既有知識が新しい知識の習得を助ける(e.g,Ausubel,1963)
→アナロジーを推薦
・ アナロジーによる教授や学習の多くの研究は、個人のアナロジーを用いた判断能力を示す研究室型調査
・ 大学生や小学生が対象
→青年期の学習・中等教育に関する研究はない
本研究の目的
様々な生徒を含む中等教育のクラスにおいて、重要で難しい概念の教授の道具としてのアナロジーの有用性について調査
Concept Anchoring Table(図1)
既有概念と新たな概念のアナロジーを促進するために視覚的に表現
教師と生徒との共同作業によって構成していく
Concept Anchoring Routine
概念教授の先行研究に基づく
アナロジーの利用によって新たな概念を既有概念に結びつける
cue, do, reviewという3つのフレーズを持つ
研究1:特別にデザインされた授業でのRoutineの効果
方法
被験者および設定:
・ アメリカ中南部郊外にある3つの高校から3名の教師が受け持つ普通教育の83名の生徒を選出
・ 4つのタイプの生徒を含む
high achiever(HA)12名,normal achiever(NA)28名,
low achiever(LA)15名,learning disabilities(LB)28名
授業内容:
・ 数のピラミッド型、偏利共生、食物繊維、有機栄養物
・ 条件1では偏利共生、条件2ではピラミッドで表とRoutineを使用
測定法:
・ 1つの概念に対して8個の質問
手続き:
・ 45分中、35分間の授業
・ 授業開始前に生徒にノートを配布し、書き留めるよう指示
・ 翌日に生徒にテスト
結果
・ 条件1は条件2よりも偏利共生に関する正答率が高い F(1,81)=20.03,p<.000
・ 条件2は条件1よりもピラミッドに関する正答率が高い F(1,81)=9.12,p<.001
・ 有機栄養物と食物繊維には有意差なし
・ 偏利共生ではLA,NA,HAにおいて有意。LDでは有意差なし
・ ピラミッドではLD,NAにおいて有意。LA,HAでは有意差なし
結論
・ 難しい概念を教える際、Concept Anchoring Routineを用いることは生徒のより良い成績に有効である
・
全ての場合においてではないが、LA,LD同様にHA,NAの生徒にも効果がある
研究2:Routineの使用の教師への訓練の効果
方法
被験者:
・ カンザス西部郊外にある2つの中等教育の教師10名(約8カ月で80ドル)
・ 各教師につき1クラスが対象 10クラス193名
設定:
・通常授業で45分から55分
測定法:
・ 教師がどれだけRoutineの教授を行ったかを12ポイントのチェックリストで測定
・ 使用されたアナロジーのタイプを分類(領域間・領域内、具体・抽象、構造的・機能的)
・ 満足度に関する質問紙を教師及び生徒に実施
手続き:
教師に対して2時間のワークショップ
授業で少なくとも2つの概念に対してRoutineを用いた教授を行う
結果
・ Routineの使用は訓練前の平均4%から94%に増加
・ 実験終了(1991)の8年後、10名中8名が使用を続けている
・ 使用されたアナロジーのタイプは
理科…領域間10,領域内7,具体8,抽象9,構造的4,機能的10,両方3
社会…領域間9,領域内7,具体5,抽象11,構造的4,機能的11,両方1
・ 教師はRoutineの授業に満足し、使用の継続や他の教師にも推薦
・ 生徒の満足度は教師ほど高くなく、クラスによって差が大きい
研究3:実際の授業でのRoutineの使用の効果
方法
被験者及び設定:
・ 研究2に参加した教師の中から1名(7年生、生命科学)
・ その教師が担当する中の1クラス18名の生徒
・ 通常授業で行う
測定法:
・生徒の概念の記憶を測定する9項目の自由記述テスト
手続き:
・ 喉頭蓋,膵臓,肺胞,食道の4つの概念を選出
・ 各概念につき15分の授業(喉頭蓋及び肺胞:Routine、膵臓及び食道:Traditional)
・ 翌日テストを実施
結果
・ RoutineとTraditionalの間に有意差あり t(34)=9.11,p<.000
・ 喉頭蓋と膵臓の間に有意差あり t(34)=7.33,p<.000
・ 肺胞と食道の間に有意差あり t(34)=3.35,p<.002
討論
・ アナロジーを用いた教授は、中等教育における理解や記憶を促進
・ 成績が優秀又は普通程度の生徒だけでなく、落第の危険性のある生徒にも効果的
・ 実験室的状況だけでなく、実際の授業にも効果あり
・ 教師はConcept Anchoring Tableの作成やConcept Anchoring Routineの使用についての学習が早くでき、その使用に満足
問題点:
・ 全体的な成績は向上したが、Routineが使用された場合においても落第する生徒はいる
・ 生徒の満足度は「満足」の範囲ではなく「普通」であり、教師によって大きく異なる
・ アナロジーのタイプ別の影響も検討する必要
・ 教科や規模を広げて調査する必要